黒狼記

第二十六話 乗り越えるために

蒼あおは背負せおっていた荷物を下ろして、中身を改あらためた。 目当てはもちろん、持たされた大きな葉に包まれたおにぎりと竹の水筒である。 椿つばきが早起きをして握にぎってくれたおにぎりで、荷物に入れてくれていたのだ。 中の具は梅干しだと椿から...
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第二十五話 暗がり

「若藻にゃもが正気でなくて助かった。本来の奴なら、妖術など使わせてはくれんかったじゃろう」 三人は弓月ゆみづきの妖術のおかげで難なんを退しりぞけていた。 『炎気えんき 陽炎かげろう』は幻術。 掛けられた若藻は解けるまで揺らめく弓月たちの幻を...
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第二十四話 大太刀探し

浜太郎はまたろうの匂いを頼りに辺りを嗅かぎ回りながら進む。 狼おおかみの姿になった蒼あおは坂道もなんの弊害へいがいもなく歩いた。 少し土が緩ゆるくとも軽く滑るだけで、四本足で踏ん張ればなんとかなる。『やっぱり、この姿の方が楽でいいな。いつも...
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第二十三話 明朝

明朝みょうちょう。 久家神社ひさけじんじゃ、飛駕山ひがやまの麓ふもとにある大きな鳥居の前にて。 先に更子さらこと浜太郎はまたろうが待っており、弓月ゆみづきと蒼あおと椿つばきが着いた。「御三方、おはようございます」「待っておりましたぞ!」「…...
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第二十二話 大太刀

「そんな事があったんですね」「はい、語られる浜太郎はまたろう様もお辛そうでした」「……ん?」「蒼あお様、どうかして……」 蒼の胸から勾玉まがたまを経由して、弓月ゆみづきが出てきた。 出てきて早々に胡座あぐらをかいた。 蒼と椿つばきはどういう...
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第二十一話 橋渡し

翌日よくじつ。 昨日の取り決めで浜太郎はまたろうから事情を聞いてきた更子さらこがやってきていた。「まずは、お詫わびをさせてくださいませ。配慮はいりょが至いたらず、申し訳ございませんでした」 粛々しゅくしゅくと離れに入ってきたかと思えば、すぐ...
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第二十話 浜太郎

「ご馳走様ごちそうでござる」  意外にも最後に食べ終えたのは、武士の浜太郎はまたろうであった。「お粗末そまつさまでございます。身体の具合はいかがですか?」「幾分いくぶんか良くなってきた感じはするでござる」「それは何よりでございます」 入山に...
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第十九話 かれこれ四日目

武士を連れて帰ってからというもの、三日が過ぎた。 武士が起きた際に混乱して、蒼あおや椿つばきに襲いかかるかもしれない。 と更子さらこから言われ、二人は会っていない。 容態ようたいもご飯を受け取る時に巫女達から教えてもらうくらいである。 そん...
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第十八話 離れ 其の弍

武士を社務所しゃむしょへと連れて行かれてたから、蒼あおは離れで一人でいた。 する事がないので、今日のうちに出来るだけ勾玉に妖力を注いでおく。 いつでも弓月ゆみづきが仮の姿で動き回れるように。 共に戦えるように。 飛駕山ひがやまで相手の力の一...
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第十七話 褌一丁

武士ぶしをおぶった蒼あおと弓月ゆみづきは、全力で土から逃げ始めた。 土がまるで波のように唸うねりをあげて、迫ってきている。「直じかで見ると圧巻あっかんだな」「たわけ! 後ろを見る余裕があるなら早く走れ!」 弓月の叱咤しったを受けて、蒼はより...