第三十九話 おかえり〜

 

 王都の城門に着いた四人は、十日ぶりに戻ってきた。
 入国する際にまた門兵のグウェドに会い、金勘定時かねかんじょうじに荷台の手配をしてもらった。
 サキとモトも木箱を乗せた後に変身を解いてから入国した。

「さてと! 帰ってきたけど、羽毛やらはどこで売るの?」
「私にアテがあるわ」
「あ、もしかして、あの怪しい商人?」
「そういうこと、行きましょ」
「ちょっと、オカマも荷台を押しなさいよ! 手、怪我してんだけど!」
「私が後ろに居たんじゃ場所がわからないでしょ? それにゴブリンを倒しといてよく言うわよ」
「私たちが押しますから良いじゃないですか」
「シグさんの分まで押しますよ」
「それなら良いけどさ〜」
 
 少し膨れるスズネを無視して、シグは前を歩く。
 どちらにせよ、スズネの言う「怪しい商人」とやりとりできるのはシグと面識があっての事。
 その場所もシグしかわからないのだからスズネも納得いかなかったりするのである。

「今日はこんなところで店開き?」
「ん〜? おー! 金杏以来きんなんいらいやないか」

 大通りから離れ、王都の中でも人が寄り付かなさそうな裏路地その店はあった。
 道端にシートを敷き、店主と脇には金が入った器に商品が並べられていた。
 サキを見つけるために買った金杏はここで買ったものであった。
 厳密に言えば、こんな所で買ったものではなかったのだが。

「今日はこんな所でやってるのね?」
「そないな言い方はようないで? ここにもわいの客は居るんやから」
「そうね、わざわざ貴方に会いにくる物好きもいる訳だしね」
「せやろ?」

 ボロ衣を頭から被り、目は隠れている。
 口元は見えていて、ニヤリとはにかんで健康的な歯が見えていた。

「今日は買い取ってもらいたいものがあるの」
「買い取り? おいおい、貧乏な店から金をせびるんか?」
「それはモノを見てからにしてもらえないかしら」

 ギリギリ路地に運び入れた荷台をシグが指差した。
 荷台の近くにスズネとサキとモトが居る。
 店主は面倒くさそうに視線を向け、面倒くさそうに立ち上がり荷台に近寄る。

「こんなにか……中身はなんや?」

 指でとんと木箱を叩いて、中身を少し確認する程度に開けた。
 少し中身を見ると木箱を閉め、次の中身を見ていく。
 荷台に乗り込み、次々と中身を見る。

「おい。本物か、これ?」

 最後の木箱の中を見た時にシグへと声をかけた。
 
「間違いないわよ。私たちが仕留めたんですから」
「ほんまやろ〜な?」

 ジロジロと疑わしそうに中身を見ていた。

「ほとんどはアタシとサキとモトが倒したんだから! 間違いないですぅ〜!」

 不満そうにスズネが言うと、サキとモトも頷いた。
 
「ん? 証人が四人か〜。それに羽毛は鳥人族のもんやな。見た感じ質がいいもんばっかりや。量増かさましされてへん」
「信じてもらえるかしら?」
「金杏の時の約束として、ええ話もってきてくれたようやし、信じたるわ」
「で、いくらで引き取ってくれるの?」
「そうやな〜……どれも質がええし、客も喜びそうやしな。ざっと見積もって」

 呟きながら荷台から降りて、右手人差し指を立て、左手を広げた。

「金貨百五十枚でどうや?」
「良いわね、それで頼むわ」
「ひひっ、全くおもしれぇ儲け話もってきてくれる奴だぜ。ちょっと待ってろよ」
 
 店主はシートを敷いただけの露店に戻り、ガサゴソと漁り始めた。

「ちょっと、オカマ! ほんとにそれで良いの?」
「何が? 妥当だとうな金額よ」
「だって、金貨百五十枚って」
「それだけ感謝してくれたってことよ」

 シグがサキとモトを見ると、ゆっくりと頷いた。

「もちろん、里を救ってくれたのですから」
「足りないくらいですよ」
「そ、そうなんだ〜。なんか照れちゃうな〜」

 スズネが照れくさそうに頭に手を乗せて、鼻をいた。

「そら、代金や。確かめるんなら、ここで広げてもらってかまへんで?」

 店主がシグへと麻袋あさぶくろを渡した。
 シグが受け取るとジャラジャラと音がして、抱えた腕に乗ってきた。
 
「大丈夫よ。私は信用してるから」
「そりゃ、どうも。荷台ごともらうから置いといてくれ」
「ありがと、また何かあれば頼むわね」
「次は買ってくれや」

 店主は去っていく四人に声をかけるのだった。

「めちゃくちゃ稼げたね! しばらく、遊んで暮らせる〜!」
「スズネ、何か忘れてない?」
「え? なんかあったっけ?」
「騎士団の詰め所に行くわよ」
「え? なんで……あ!」
「すみません」
「モトの姉がすみません」

 次に向かったのは騎士の詰め所。
 サキの窃盗の罰金として金貨五十枚を納めた。
 シグ達四人とその場にいた騎士達で枚数の確認作業を終えて、間違いなく納め詰め所を後にした。

「残り百枚か〜」
「報酬としては十分よ」
「じゃあ、取り分はアタシが十割ね!」
「半分に決まってるでしょ」
「ちぇ〜」
「もっと稼げると思いますよ?」

 サキの言葉にモトがにこやかに頷いた。
 スズネとシグは何のことかと頭を傾げた。
 そんなことよりもスズネのお腹が鳴った。
 半日で移動して、用事をしていると昼ごはんを食べ損ねていた。
 色々とやってるうちにもう夕方である。

「そんなことよりお腹すいた〜!」
「そう言えば、食べ損ねていたわね」
「みんなでハイネのご飯食べようよ!」
「スズネのおごりね」
「オカマの奢りに決まってるじゃん!」

 そんな話をする二人をサキとモトは笑うのだった。
 四人が次に向かうのはハイネの店である。

「たっだいま〜! ハイネ、居る〜?」
「居るに決まってるでしょっ!」
「おー! この声は!!」
「スズネちゃんだぁー!」
「スズネちゃん、おかえり〜!」
「なぁ、言っただろ? スズネちゃん達が帰ってきたって!」

 ハイネは半ギレ気味にスズネへと返事をしてきた。
 別々の話をしていた客達が一気にスズネの声に反応して、一気に共通の話題で盛り上がり始めた。

「スズネ、おかえり〜」
「え、リン姉!?」
「心配だから、来ちゃった」

 カウンターに座り、グラスを片手にリンネが声をかけてきた。
 スズネは姿を見るなり、すぐに近寄っていった。

「今日ね! 鳥人族の里から帰ってきたよ!」
「そうみたいね……その腕はなにかあったのね?」

「ほんとだ、どうしたんだいそりゃ」

 リンネと客が視線を向ける先には包帯でぐるぐる巻きになったスズネの両腕があった。

「サラマンダーの魔族と戦った時にやられちゃって、治せないみたいなんだよね〜」
「これは呪いの類だから、治せないわね。でも、お姉ちゃんに任せて」

 スズネの包帯を取ると、そこにはゆっくりゆっくりと腕をただれていきそうな皮膚が見えた。
 見るに耐えない両腕だが、リンネはひるむことなく手を差し伸べた。
 
『他を呪いし、邪悪を取り除き給え』

 爛れていきそう皮膚の赤みが消え、その名残だけになった。

『癒しを与え給え』

 治癒魔術を掛けてすぐに治した。

「わぁー! ありがと、リン姉!」
「どういたしまして。魔族と戦ってる時になにか変なことはなかった?」
「特にはなかったと思うけど、なんか魔族に「裏切り者」って言われたんだよね〜。訳わかんない」
「そうなのね」

 リンネはスズネの左目を撫でてから、抱き寄せて頭を撫でた。

「何はともあれ、無事に帰ってきてくれて良かったわ」
「へへ、あんなのには負けるつもりないって」

 微笑ましい光景の中で、シグはリンネの仕草に違和感を感じていた。
 左目を撫でたこと。
 なによりそれが気になったのだ。
 その視線にリンネが気づいたようだったが、シグに対してウィンクをしてきた。
 それも左目でだ。

「スズネが無事ってわかった訳だし、ワタシは帰るわね」
「えー! 鳥人族の里のこと話したいのに!」
「また今度に聞かせてもらおうかな。ワタシも忙しいからね」
「う〜、わかった。リン姉も気をつけてね」
「任せといて〜」

 リンネはそう言って、シグへと近づき肩を叩いた。

「また二人でお話ししましょ、シグくん」

 シグに呟くと返答を待たずにそのまま店を出ていった。
 出ていく姿をシグは見送るのだった。
 そのあとはお客さん達とお帰りパーティとなり、サキとモトは何でも屋に泊まり、次の日には帰っていった。
『王都で里の者が困った際には、スズネさん達に頼るように伝えておきますね』
 とサキが言って帰っていった事で二人にとんでもなく忙しい日々が訪れるのは次のお話。

名もなき世界の何でも屋 Ⅱ           完

                             蓮木はすき ましろ

あとがき……のようなもの

 
 おはようございます。
 蓮木ましろです!
 初めましての方は、初めまして。
 今後ともご愛読頂ければ、幸いでございます。

 今作の『名もなき世界の何でも屋 II』を投稿して、五年目になります。
 本当なら五作品目でこういった事を言いたかったのですが、筆が遅いこともあり年数と作品数のズレが起きてしまっています。
 ま、そこまで重くは考えていないのでたわいない話なのですがね。

 今作から投稿する月を固定にできたらなと考えています。
「毎年の七月一日から作品が終わるまで毎日投稿する」というのをやっていきますよ!
 さっきも書きましたが、筆が遅いので一年に一作品を書くのが精一杯なのです。
 筆が遅いのもプライベートの隙間時間に執筆しているからというのもありますが、繰り返すと言い訳みたいになりますね。
 なので、今作『名もなき世界の何でも屋 II』が今年の新作になるということです。
 楽しんで頂けたなら、幸いでございます。
 もし、お暇な時なんかに読み返したくなったら、いくらでも読んでください。
 僕の作品で作品作りの勉強になるなら、大いに勉強してくださいませ。
 パクリやAI学習のネタにするのはやめてくださいね。
 あとがきのようなものまで読んでくださる読者様にはそんな方はいないと信頼しております。
 ただ、こんな世の中なので明言しておかねばならないと思いましたので書きました。
 ご了承ください。

 まだ考え中なのですが、noteさんでの活動も模索しています。
 もし、活動し始めましたらば、お知らせできたらと思います。
 短編作品をnoteさんで上げていくのもいいのかもしれませんね。
 既存のを移し替えるようかな……なんて書いてる今現在考えていたりします。
 考えがふらふらとしていますから、興味のある方は気長に待って頂けると幸いです。
 アカウントはあるのでアタリはつけてくださっても構いませんよ、なんて。

 来年の投稿は『黒狼記 参』となります!
 サブタイトルはまだ考え中ですが、プロットは出来上がっています。
 本編の三話目を書いている最中ですので、来年の投稿まで気長にお待ちくださいませ。
 雑記や短編作品も投稿するかもしれませんが、これらに関しては気まぐれです。期待はしないでくださいな。
 今作もたくさん読んで頂き、ありがとうございました。
 次のあとがきか、雑記でお会いしましょう。
 それでは。

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