次の日の早朝、サキとモトの背に乗った何でも屋の二人を見送るためにロフクとチュウヒが別れの挨拶をしに来た。
「本当にありがとうございました」
「私たちは成り行きで手助けしただけよ」
『それでも、救われたのは本当ですから』
『事情はともあれ、お二人を連れてこられてよかったです』
「まったくだな」
「え~? それをアンタが言うの? 一番偉そうにしてられないアンタが~?」
「ちっ! 感謝している!」
「コイツ、舌打ちした! やっぱ、殴るべきよね!?」
「やめなさいよ」
全てのことが終わって次の日の早朝、罰金の期日を守るためにも足早に鳥人族の里を後にする事にしたのだった。
・――・――・
時間は遡って、シグが族長の家へと招かれた時のことである。
族長の家の中には奥の部屋から引っ張り出したのか、長机とその両側に三個ずつ向かい合った椅子があった。
机や椅子といっても切り出されたままの無骨なものだったが、シグは構う事などなかった。
シグは入り口側の真ん中の席をワゲハシに勧められ、座った。
ワゲハシとチュウヒは反対側の両脇に。
シグの両脇には少し泣き止んだサキとモトが座り、ロフクは反対側の真ん中の席に座った。
「襲撃の後にも関わらず、話を聞いてくださりありがとうございます」
シグ以外の全員がシグへと頭を下げてきた。
「だから、そういうのは」
「わかっておりまする。ただ、これは儂らの誠意と礼である事もお忘れなさらずに」
ロフクにそう嗜められてはシグもぐうの音も出なかった。
「さて、お引き止めしてまでのお話というのは、ラグユラシル大森林にかけられていた結界とアドゼミド王家の末裔についてじゃ」
「結界……?」
「如何にも。神鳥様が張ってくださった結界じゃ。魔族の侵攻を防ぎ、鳥人族を守ってくださっておった結界が張られていたのじゃ」
「……いたって事は、もうなくなったのね?」
「うむ。だからこそ、魔族たちの侵入を防ぐ事ができずに今日の襲撃を招いてしまった」
「でも、どうして、その結界が破られてしまったの? 今まではサラマンダーたちを防げていたんでしょ?」
「あなた方が里に入ってきたからですよ」
「私たちが? 私たちは何もしてないわよ? サキとモトにも聞けばわかるはずよ」
「それはわかっております。一瞬破れたように感じられましたが、解けていった。神鳥様からも伝えられた事なのじゃが」
『アグゼミド王家の末裔が現れる際に結界は解かれるであろう』
「と言い残しておいでだったのじゃ」
「なんで、そんな事をする必要が?」
「儂らにはわからないが、アグゼミド王家は滅んでいない事をお伝えになりたかったのやもしれぬ。そうする事で儂らが野垂れ死ぬのを防いでくれたのやも……」
あくまで推測ですがな、とロフクは続けた。
「なんとかシグ殿達が来るまで生きていられた。そして、結界を解かれるのもまた儂らとしてはありがたい事だったのじゃ」
「なんで?」
「魔族の侵攻を防ぎ、一族を守る結界。魔族だけでなく、他種族の介入も妨げていたのです」
「鳥人族は獣人族と王家との貿易をして、生業としていた。結界のせいで貿易が妨げられ、大森林のものを食べざる負えなかったのです」
「貿易が妨げられてるって事は、今回の依頼の報酬は?」
「それはご安心ください。今まで皆が集めてきた羽毛が倉庫にありますからな。それをお持ち帰りください。」
「持って帰るにしても私達はそんなに持てないわよ?」
「私とモトで荷物もまとめて王都へとお送りしますよ」
「そう、ありがとうね」
おほん、ロフクが咳払いを一つ。
「話を戻させてもらうが、この結界は他種族にも張られておる。シグ殿にはそれを解いて、他種族の危機も救ってほしいのです」
「私が?」
「そうする事でアグゼミド王家の末裔の信頼度が高まれば、王家の復刻に尽力いただけるでしょう」
「ここみたいに貿易ができずに困っている国もあるだろうから、他も助けるのね」
「左様です。やってくれませぬか」
「わかったわ。私としても仲間は多いに越した事はないからね」
「ほほほ、儂らとしてもこれで他国との貿易もやり取りもできるようになりますわい」
ほっほっほ、と景気良く笑うロフク。
シグも少し気が緩んだが、話はまだ終わりではないようで。
「さて、次の族長だが」
「父上、その話をする前に俺からも一つ」
ロフクが話を切り出そうとした時にチュウヒが割って入った。
チュウヒは言いながらに傷だらけの身体をおして、立ち上がった。
「シグ殿が来てから、いや、来る前からも俺は皆に失礼な事をしてしまっていた。サキとモトには特に」
チュウヒは机に手をついて、頭を下げた。
「すまなかった」
四人とも頭を下げるチュウヒを黙って見ていた。
「お兄様、頭を上げてください」
サキの声にチュウヒは頭を上げた。
「反省しているのですし、そこまでボロボロになったならおこがめもなしで良いでしょう。ね、お父様」
「そうじゃな。それに次期族長が言うならそうしようかの」
「え、ということは」
・――・――・
「ところで、族長が里から出てもいいのかしら?」
『では、誰がお二人を王都までお送りするんですか?』
「そうそう! オカマは余計な事を言わなくていいの! アタシは歩いて帰るとか考えらんないから!」
『そもそも、人の身では沼は越えられませんからね』
「ねぇ~!」
族長の首飾りはサキが身に着けている。
すなわち、次の族長はサキということになったのだ。
『族長ですが、シグさんを背に乗せるのは私ですからね』
『モトは、スズネさんを乗せますっ!』
「わ~い! ありがとね、モト!」
「はいはい」
四人はまた王都へと向かう。
サキとモトのは二人を送るだけでなく、里でもらった物品を運ぶためでもある。
罰金を返済するにあたって、物品をもらい受けて、王都で売ってお金に換える。
鳥人族の羽毛は高値で売れるそうで、はるか昔には狩られる対象でもあったそうだ。
何はともあれ、鳥人族の問題を成り行きではあったけど、解決することができた。
あとは王都に戻って、今回の依頼を完了するだけである。
「一件落着といけばいいけど……」
「あぁ~! オカマ! また襲われている人たちがいるよ! 助けよ!」
「……はいはい、お礼をせびらないようにね」
「わかってるって~」
「二人とも下りてちょうだい」
『『わかりました!』』
また獣人族の商人一団を救い、お礼をもらった。
今度こそ金貨でのお礼である。
受け取った後に四人は王都へ向かった。
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