第二十一話 一鳥二石って、この事ね!

 

「それでは、お父様のところへ行って参ります」
「二人とも、いってらっしゃ〜い」

 日が登ろうとしている頃にサキとモトは飛び立っていった。
 また帰ってくるそうだし、朝ごはんも用意してくれているから安心。

「帰ってくるまで自由行動って感じね」
「それなら、もうちょっと横になってようかな〜。ふわぁっ」

 二人が起き上がったタイミングでベッドを同じくしていたアタシは一緒に起きた。
 オカマも眠りが浅かったのか目が覚めたみたいで二人でサキ達を見送ったわけで。
 
欠伸あくびしてても良いけど、あの子達のこと、どうにかしてあげるんじゃなかったの?」
「チュウヒと話して、気に入らなければ、四人で袋叩きにすればいいって」
「……チュウヒと話す時に、スズネは席を外した方がよさそうね」
「兄妹でお兄ちゃんなんでしょ? どう考えてもあっちの逆恨さかうらみだし、自分がお母さんを助けられれば良かったってのを全部、サキとモトに擦りつけてる奴なんてらしめてやらないと」
「懲らしめるのは暴力じゃなくて良いのよ。しっかりと反省させて、心からお互いを許し合えないとこれからもうまくいかないと私は考えてる」
「見るからに意地悪そうなのをどうやって、反省させるの?」
「それを考えてるところね」
「ふ〜ん、結局はアイツの態度を改めさせないといけない気がするけど、オカマがそうしたいなら考えてみて……ふわっ、アタシはもうちょっとゆっくりしてるから」
「はいはい。……と言っても、他所に来ているのだから、成り行きに任せるしかないわね」

(やっぱり話し合った所でじゃん)
 って思ったけど、サキ達と三人で寝たベッドへと潜り込む。
 柔らかい枯れ草で作られたベッドは家のとは違う気持ちよさがあって、堪能しておきたい。
(家のもこれにしようかな?)
 なんて考えてたら、いつの間にか二度寝してた。

   ♤♤♤

 結局、サキとモトが帰ってきたのはお昼前のことだった。
 流石のスズネも二度寝から起きてきて、きのみを食べたり、家の周りをキョロキョロと見回していた。
 時折、「遅くない? ひま〜」と時間を持て余してもいた。
 
「見に行ってみる?」
「やめておきましょ、他所者がそう歩き回るのも良くないわよ」
「え〜、良い考えだと思ったのに……」

 待ち過ぎてむくれ出す始末だったから私としても早く帰ってきて欲しかったのだけど、昼前までかかるとは……
 思ったより話し込んでいたのね。

「すみません、お待たせしてしまいまして」
「そだよ! 待ちくたびれてお腹空いてきちゃった」
「この子の事は置いておいて、随分と話し込んできたのね。何かあったの?」
「それがお父様からお二人に依頼を申し込みたいと言われまして」
「え?」
「それはまた、どういう事かしら?」
「私達と協力してではありましたが、サラマンダーを倒したお二人の腕を見込んでお兄様のチュウヒと戦ってほしいと」
「アイツと戦えるの!? よし、ボコボコにしてやる」

 いきなり、何も無いところへとこぶしを繰り出すスズネに頭へ手を添えた。
 もう何を言っても断る事は無さそうね。
 
「……なんでそんな話になったのかも聞きたいのだけど?」

 サキさんはチラリとスズネを見て、その後、モトさんにも目配せをした。
 背負っていたかごを下ろすモトさんは頷いて、身体を動かすスズネへと近寄っていく。
 サキさんは私に手招きをして、耳打ちの仕草をしたので耳を近づけた。

(お父様はもうシグさんの正体に気づいています。お兄様を相手に是非とも力を振るってもらいたいと。お兄様は正体に気づいてはいないようなので、それを思い知らせるためにもと言っておりました)

 サキさんに目を合わせると頷いてきたので、間違いないのだろう。
 正体に気づかれたのは……流石はとしこうと言うべきか。
 もしかすれば、父上や母上に会ったことがあったのかもしれない。
 いや、族長の血筋ならあるだろう。
 その時にアグゼミド王族特有の魔力を先代の族長から覚えるように言われ、覚えていたに違いない。
 となれば、他の族長達にも言えるのでは?
 スズネを巻き込みたくはないし、他の族長達と顔を合わせる際はスズネを同席させない方が良さそうだ。
 私が考え込んでいると、サキさんが服を引っ張ってきた。
 サキさんを見ると、スズネへと視線を向けていたようで。

「オカマ!」
「な、なに?」

 急に話しかけられて驚いたけど、スズネは構わなかった。
 
「もちろん、この依頼引き受けるよね? アイツの事をボコボコにする良い機会が回ってきたんだし。ついでに、サキ達の事もうまいこと認めさせましょ!」
「ほとんど私怨しえんじゃない。あと、うまいことってどうするの?」
「それはオカマに任せる」
「貴女ね〜?」

 丸投げにも程がある。
 
「ともかく! この依頼を受けて、うまくいけば報酬も弾むってモトが言ってたの! チュウヒはボコれるし、サキ達を認めさせれて、報酬も弾む! 一鳥二石って、この事ね!」
「それを言うなら一石二鳥よ、おバカ。サキさん、この依頼受けさせてもらうわ」

 サキさんを見てから頷いた。
 さっきの件も踏まえての承諾と受け取ってもらえただろう。
 
「ありがとうございます。昼食後にまたお父様の所へ行って参ります」

 スズネが「誰がバカよ!」と怒っていたが、「昼食」という言葉を聞いて、机へと向かっていった。
 そういう所もまたバカと言いたくなったけれど、私もお腹を空かせていたのでスズネを悪くは言えないわね。

「あ! 虫は勘弁だから!!」
「わかってます! なので、お父様の所からいっぱい果物と豆などをもらってきました!」
「モト、ナイス! 早く食べましょ!」

 モトさんが背負っていた籠の中身はいろんな果物と豆が入っていた。
 机を四人で囲み、思い思いにその果物やら豆やらを食べた。
 虫は出てこなかったが、後でサキさんとモトさんは隠れて食べていた。
 家主なのに肩身を狭くさせて申し訳なくなったが、有り難くもあった。

「それでは、私だけでお父様へ依頼の件をお伝えしにいきますので、依頼内容はモトからお聞きくださいませ」

 そう言って、サキさんは一足先に飛び立っていった。
 私の事も話すのだろうが、どうか穏便おんびんに事を進めたい所だ。

「お二人に見せたい物があるので、モトの背に乗って頂いてよろしいですか?」
「え、依頼内容は??」
「行きながらお話しします。依頼内容にも関わる物なので、見てもらえれば話も早いですから」
「わかったわ、案内してちょうだい」

『もちろんですとも』

 家外の床スペースでモトさんは大きな鳥の姿となった。
 例に漏れず、手綱たづなを付けさせてもらって、スズネと私も背に乗る。

「手綱はオカマに任せるから、アタシの背もたれにもなって」
「はいはい、その方が乗りやすいものね」
「分かればよろしい」

 さっき、「おバカ」呼ばわりしたのを根に持っているようで睨みながら言ってきた。
 これ以上、事がややこしくなる前にゴマをこすっておくことにした。

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