『コケ! コッコォ〜っ!!』
試合開始の鳴き声と共にサブハヤは何でも屋二人目掛けて急下降した。
「俺の速さについてこれるか?」
試合前から居た所からの飛び降りるような滑空だが、なかなかに速い。
スズネとシグに翼が当たるように飛ぶも、容易く避けた。
だが、避けただけである。
反撃を許さない程の速さが開始直後に出せる。
それがサブハヤの強みであり、試合が長引けば速度はさらに上がる。
普通であれば、遅くなるものだが、それを補う体力の持ち主であるとか。
抽選会でシグが聴き込みをした通りなら、長期戦は避けたい相手だ。
「まぁ、避けて当然か。次も避けれるかな?」
サブハヤは飛ぶ勢いそのままに上昇して、籠上部を飛び回り始めた。
羽ばたくほど、速度が上がっている。
先程の攻撃よりも速く飛んでいるのは目に取れるくらいに。
「情報通りのようね。スズネ、作戦通り短期決戦で行くわよ」
「おけおけ、オカマもちゃんとやってよねっ!」
シグの声掛け前からスズネは自身に肉体強化の補助魔法をかける。
速く動けるための強化でもあり、相手を確実に戦闘不能にする一撃を入れるためでもある。
スズネがゆっくり屈伸したかと思うと、一気に身体は籠の最上部。
サブハヤよりも上を取っていた。
観客達からも驚きの声が上がった。
「おおっと!! 何でも屋のスズネ選手!! 凄まじい移動速度だっ!! 先程のサブハヤ選手の滑空よりも格段に速いっ!」
「はえぇ!」
「今、見えなかったぞ!?」
「俺よりも速く動くとはやるな。だがっ!」
上を取られた直後にスズネからの蹴りを容易く避け、速度を落とすことなく飛び続ける。
「その速さは直線的すぎるな」
「気取ってられるのも今のうち!!」
スズネも籠の側面に着地してすぐにサブハヤへ攻撃を仕掛ける。
どれもこれも避けられ続けた。
「まさかの空中戦! 他国の方々はあんな戦い方ができるとは驚きですっ!! サブハヤ選手もこれには反撃できないかぁ〜?!」
「さっきから避けられてばっかじゃんか」
「他所もんには俺達を空中で捉えるなんて無理なんだろ」
「でも、あんだけ早いなら当たりそうなもんだけどなぁ」
「あのねぇちゃんがヘボなんじゃねぇか? ってこっち見たか!? おっかねぇな」
「お前が悪口言うからだろ」
「上の二人は凄いにしても、もう一人は何やってんだ?」
「まさか、応援かなんかか?」
観客達が試合を眺める中で、スズネとサブハヤの空中戦は続いていた。
「そんなに攻撃して当たらなければ、どうと言うことはねぇな」
「そりゃそうよ。だって、最初から当てる気なんてないから」
「……いやいや、負け惜しみを」
「じゃあさ、なんでそんなに遅く飛んでるの?」
サブハヤは優雅に早く飛んでいると思っていたが、そうでないことに気づいた。
「なっ! ちゃんと追い風の魔法をかけていたはず!」
「相手はアタシだけじゃないってこと、忘れてない?」
「まさかっ!」
サブハヤが籠の底にいるシグを見ると、杖を出して、空気をかき混ぜるようにゆっくりと振っている。
サブハヤが右回りで飛ぶのに対して、反対回りの左回しで杖を振っていたのだ。
スズネもも可能な限り左回りを意識した攻撃を仕掛けていた。
サブハヤの正面からの攻撃が多かったせいで避けられていたのだが、向かい風を作り出すのを手伝っていたのだ。
「アンタの追い風魔法ってのは上手く働いてないってこと!」
スズネは着地後の屈伸で力を貯めて、今までの攻撃の中で最速を出した。
だが、その速さは移動のため。
サブハヤの視界から逃れ、確実な一撃を入れるための準備でしかない。
「どこに行った!?」
「ここよっ!!」
声がした方へ振り向いた時には、サブハヤの頭上にはスズネのかかとがあった。
「これで終わり!」
そして、直撃した。
サブハヤが籠の底辺に叩きつけられたのは言わずもがなである。
落下してきたサブハヤをシグが確認すると、大きなたんこぶを作って気絶していた。
「仕留めたわね」
「よっと! 当然でしょっ!」
シグが呟くと、降りて来たスズネが胸を張って自慢げに言う。
観客からも鳴き声や歓声が大きく響き渡った。
その声にスズネはまた大きく両手を振って、シグは腕組みをして周りを見渡していた。
「勝負がつきましたっ!! 他国の何でも屋、スズネ選手とシグ選手の作戦にはまり、サブハヤ選手が一撃K.O.です!! 一試合目から今までにない戦いを繰り広げてくれましたっ! まさかの空中戦は他国の何でも屋チームの勝利!! 明日の試合が今にも楽しみでございます!」
「あれ、籠の中の風を操ってたみたいだな」
「まさか! 俺達よりも風を器用に操れる奴がいたら、鳥人族の名が廃れるだろ!」
「風を読んで乗り、操るかのように飛んでいるのが鳥人族ならば、弟が相手を見誤ったに違いない」
「なかなかに面白い者たちを姫様達は連れて来たようですな」
コケコッコーのアナウンスで試合は決着。
試合を終えた後の観客達は各々感想を言い合い、第一試合目から祭は盛況であるのは明白である。
「ほっほっほ。流石はシグさんとスズネさんじゃ」
「見事な作戦でした。サブハヤは完全にスズネさんが本命だと思ったのでしょう」
「本命には違いないけど、シグさんのマークが外れてしまったのが試合の分かれ目でした」
「うむ、明日が楽しみじゃわい」
サブハヤは救護班と思われる鳥人族に連れて行かれた。
スズネとシグもまた運んでくれた鳥人族に運ばれて、籠を後にしたのだった。
その後も試合は続き、第一試合を含めた計十六試合が取り行われた。
流石に八試合目を終えた時点で、試合場所の変更があったが、滞りなく一日で終えた。
明日は第二回戦が取り行われる。
スズネとシグは次の対戦相手とその次の対戦相手になるだろう相手の試合を見てから、サキとモトの家へと戻った。
そこで作戦会議をしてから第二回戦に備え、早く眠ったのであった。
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