第二十六話 僕を倒してからにしてもらわないとね

 

 鳥籠神鳥祭とりかごしんちょうさいの二日目。
 第二回戦目の今日、昨日に引き続き多くの観客達で賑わっていた。

「今日の一回戦目も他国の何でも屋の戦いからか」
「相手は……ハブサヤか」
「サブハヤの兄貴だな」
「兄貴として負けらんねぇじゃねぇか?」
「弟の二の舞にならなきゃいいがなぁ〜」
「昨日の試合のあとじゃあなぁ……こりゃ、何でも屋のが有利だろ!」
「いや、ハブサヤには弟に無いとっておきがある。それがどう生かされるかだな」

「レディース アンドゥ ジェントルマ〜ン!! 初日の第一試合から明け、二日目の第二試合!! 今日も司会は私、ニワノ・コケコッコーがお送りいたしま〜すっ!! 一回戦目から皆様が気になっている他国の何でも屋が戦います! 相手は、昨日の対戦相手だったサブハヤ選手のお兄さん、ハブサヤ選手だ〜!! 兄の意地を見せる事ができるのか!? 何でも屋のスズネ選手とシグ選手はどう戦うのか!? では、選手の入場です!!」
 
 コケッコーの声を合図に、観客達の足元から飛び上がってくる鳥人族の姿が現れた。
 右側は鳥人族が一人だけ、左側は二人の鳥人族の足を掴んでいる人間の姿があった。
 向き合うように籠の中へと入っていく。

「右翼〜! ハブサヤ選手〜!」

 先に籠に入ったハブサヤは、勢いそのままに籠の上部を旋回せんかいしてみせる。
 背には弓と十二本の矢が入った矢筒やづつ背負せおっている。
 それに歓声が上がったが、二回りしてから籠の縁へと止まり、お辞儀じぎをした。
 右翼は高らかに広げ、左翼は胸元へと紳士的しんしてきな立ち居振る舞いである。
 それはロフク達の方への挨拶あいさつのように見て取れた。

「左翼〜! 他国の何でも屋! スズネ選手! シグ選手!」

 スズネは昨日に引き続き、両手を振って、歓声かんせいこたえる。
 シグもまた相手を見据みすえていた。
 ハブサヤも司会の声を聞き、翼をたたんで二人を見た。

「本当なら弟との試合になる予定だったのだが、負けてしまったのなら仕方がない。あなた方に勝って、弟よりも強い事を証明するとしよう」
「勝つ気満々なところ悪いけど、勝つのはアタシ達だから」
「弟に勝っただけで鳥人族に勝てる自信が付くのは少しお門違かどちがいさ。せめて、僕を倒してからにしてもらわないとね」

 翼の先を手に変化させて、背の弓とや矢筒から矢を取った。
 もちろん矢の先端には矢尻はないが、当たれば当然痛いのである。
 ハブサヤは弓の使い手でもある。
 サブハヤと同じ程に飛ぶスピードもあり、止まらずとも矢を目標へと当てられる。
 とっておきというのは弓の腕前であった。
 スズネも構えて、シグは早くも杖を抜いていた。

「さて、両者とも会話が終わったようなので、試合を開始いたします! 果たして! 勝者はどちらになるのか! レディー!!」

『コケ! コッコォ〜っ!!』

 ハブサヤはつがえていた矢をスズネへと射た。
 スズネは軽く避けながら、肉体強化を自分に付与した。
 避けられるのをわかっていたように飛び始めるハブサヤの鉤爪かぎつめには弓が握られていた。

「なんで足に?」
「見てればわかるわ」

 シグの言う通り、ハブサヤは器用にも足で弓を構え、手で矢をつがえて、引きしぼり、る。
 狙いはスズネだったが、当たることはない。

「すごい器用じゃん!」
「ふふ、相手を褒めるとは余裕だね?」
「余裕だからだよっ!」

 そう言った直後にスズネはハブサヤへと一気に距離を詰め、拳を構えていた。

「驚くべき速さだ、だがね」

 ハブサヤは拳を食らう前に翼を羽ばたいた。
 すると、突風が起こり、スズネを吹き飛ばす。
 避ける事はできずにまた籠の底へと押し戻された。
 ハブサヤはというと、羽ばたいたおかげで更に上部へと舞い上がり飛行している。

「君が近づこうとも僕は吹き飛ばすだけさ」
 
 滑空かっくうしながら、矢を射る。
 籠の上部からでも狙いにくるいはなく、シグにもスズネにも避けなければ当たる射線。
 
「私に構わずに」
「わかってる!」

 スズネが避けた後にシグも避けた。

「このっ!」
「ふふ、無駄な事を」

 スズネは避けながらにハブサヤへと攻撃したが、急下降されて避けられた。
 ハブサヤはシグへと一気に距離を詰める。

(あっちの子よりも君の方が怖いからね)

 ハブサヤは作戦を立てているのがスズネよりもシグであろう事は情報を集めている様を見て気づいていた。
 だから、スズネよりも先にシグを叩くべきだと判断したのだ。
 ハブサヤは急下降しながらも、矢を射た。
 シグはいとも容易たやすく避けるが、避けた後をハブサヤは逃さない。

「一思いに場外に吹き飛ばすっ!」

 ジャンプして矢を避けたシグには避けられない。
 ハブサヤがシグへと翼をぶつけて、吹き飛ばそうと近づいた時である。
 シグの口角が上がっている事に気づいたのは。
 
「それは無理っ!」

 まさかと思った時には、ハブサヤの胴にはスズネの蹴りが入っていた。

「がはぁっ!! そんな速すぎるっ……」

 ハブサヤ自身の速度のせいで肉体強化されたスズネの移動した勢いの乗った蹴りを迎えにいってしまったのだ。
 ハブサヤはお腹を抑えながらうずくまってしまった。

「ん? だって、さっきの攻撃はフェイントだったし、オカマの作戦通り」
「うまくいって何よりね」

 シグを先に倒そうとするあまりに、スズネへの警戒を怠ってしまった。
 今回の何でも屋の作戦はシグを囮にして、相手に隙を作らせるというもので、まんまと引っかかった訳である。
 弟のサブハヤとは違う形だが、スズネに戦闘不能へと至らしめる攻撃を受けてしまった。

「そ、そこまで考えられていたとは……弟よ……」

 無念と言うように気を失うハブサヤ。
 確認をするまでもなく、試合に決着がついてしまった。

「勝負つきましたぁ〜!! 勝者は、他国の何でも屋!! スズネ選手とシグ選手ぅ〜!!!」

 歓声が上がるのを聴き、スズネは入場時と同じく両手を大きく振り、シグは周りを見回していた。

「ハブサヤ選手の矢を一度も受ける事なく、勝利を収めましたっ! シグ選手の作戦はこの二戦で遺憾いかん無く発揮され、スズネ選手の俊敏しゅんびんさは速さをほこるヤヤ兄弟を凌駕りょうがしている事がわかりました! このチームは他所者とあなどってはいけません! もしかすれば、チュウヒ様との決勝戦はこのチームになり得ますっ!! 皆様! 目が離せませんよ〜っ!!」

 コケッコーの言葉に観客達もより騒ぎ始める。
 批判的な声ではなく、賛美の声が大きく、スズネとシグへの歓声もまた騒がしくなった。

「流石にちょっとうるさいかも」
「早く退場しましょ」

 ハブサヤは弟と同様に救護班らしき鳥人族に運ばれ、二人もまた入場と同じ鳥人族に運ばれた。
 その後は次の対戦相手とラースカ連合の試合を観戦した。
 そして、作戦会議をして、早々に寝たのであった。

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