第二十話 ご清聴ありがとうございました

 

「二人ともみんなをお願いね!」
「はい! お母様もお気をつけてくださいね」
「お気をつけてください!」
「任せてちょうだい」

 そう言って、お母様はけ出していきました。
 そのあとは外の状況もわからず、私たちはえるのみでした。
 ただ、少しずつ周りが熱くなってきていたんです。

「姉さん、なんだか暑いような」
「そうですね、何が起きてるんでしょうか?」

 私達は戸惑うばかりで逃げようともしませんでした。
 ここは安全で守ってもらえると思って居たからです。
 それが間違いだったと気付いた時にはもう遅かった。
 大広間の一角が大きく壊れた時に、初めて外が焼かれていることに気づきました。
 そして、壊された所から三匹のサラマンダーが避難している私達を覗き込んで来たのです。
 この時点で覚悟を決めて、戦えば良かったと今も後悔する時があります。
 このせいでお母様が……私たちを助けたせいで……

「みんな、大丈夫!?」
「お母様!」

 三匹のサラマンダーを、風の刃をともなう突風で倒すとお母様は私達に声をかけてくれました。
 ですが、次の瞬間、炎に包まれたのです。
 敵は私達をおとりにして、最大戦力であるお母様を亡き者にする作戦をとったのでしょう。
 お母様は身を焼かれながらも、敵へ突風を起こしていましたが。

「みんな……ごめんなさい」

 そう言って、力尽きて沼へと落ちていきました。
 当時、里の下にも沼があり、ヌシは現れる事はありませんでした。
 ですが、戦いの最中、敵も味方も沼に落ちていきます。
 それをぎつけたヌシは落ちてくるお母様を見つけ、勢いよくねて一飲みにしました。

 ・――・――・

「お母様は私達のせいで帰らぬ人となったんです」

 サキとモトはずっと暗い顔をしていたけど、話し終えてより一層に辛そうな顔になった。

「でも、全部が全部。二人のせいじゃないと思う! 外で戦ってたチュウヒだって、助けられたかもしれないし!」
「お兄様はサラマンダーに追われながらも味方を助けるのに精一杯だったと聞いています。お兄様は里のため、みんなのために戦ったのに私達は……」

 あ〜、何のなぐさめにもならなかった。
 なんなら、えぐった感じになっちゃった。

「ほ、ほら、オカマも二人を慰めて」
「……その戦いって結局はどうなったのかしら?」
「何でそうなるの!?」
「チュウヒが二人をなじるのはなんとなくわかったし、慰めても仕方ないわよ。それより戦いがどうなったかが気になるわ」
「この人でなし!」
「いえ、すみません。お二人にお見せしてもどうしようもないのに暗い顔を見せてしまって」
「いやいや! お母さんが亡くなる話させたアタシ達が悪いからごめんなさい」
「あら、スズネもそういう事、謝れるのね」
「ちょっと!」

 こんな時にまでおちょくらないで!
 そう言おうと思ったけど、オカマも頭を下げていた。
 
「ごめんなさい。話してくれてありがとう。なんとなく事情はわかったわ。気分転換にならないかもしれないけど、戦いの結末について話して貰えるかしら」
「……はい」
 
 ・――・――・
 
 お母様がヌシに飲み込まれるのと同時に、光る玉のようなものが一緒に飲まれたのを私とモトは見ています。
 そして、この戦いの結末は里に伝わる伝説の鳥。
 青い鳥が現れた事で終わります。
 青い鳥は私達の先祖にあたる存在であり、神鳥としても私達は崇めております。
 神鳥様は里の真ん中の頂上に降り立ちました。
 それを見たサラマンダー達は一斉に襲い掛かりましたが、神鳥様が一瞥しただけで首が落ちたのです。
 一匹たりとも逃す事なく。
 ただ、サラマンダーを率いていた魔族はそれを逃れ、里から逃げ出していきました。
 神鳥様は追う事なく、里の有り様を見て、大きな翼を広げました。
 すると、里を燃やしていたサラマンダーの炎は消え、焼き壊れた物も元通り。
 ただ、亡くなったお母様は帰って来ませんでした。
 お父様も神鳥様に頼んだそうです。

「妻が、里の者が、亡くなってしまいました。どうかお救いください」

 神鳥様は頭を横に振り、答えたそうです。

「物を直せはしますが、命を蘇らせることはできません。ワタシがもう少し早ければ、救えたかもしれませんでした。ごめんなさい」

 そう答えて、お父様が返事をする前に神鳥様は天高く飛び立っていきました。
 お父様は見えなくなるまでお見送りをしたそうです。

 ・――・――・

「そんなのが居るんだ」
「そんなのなんて言っちゃダメよ。話を聞く限りまぼろしを見た訳じゃなさそうね」
「私達は泣き崩れて分かりませんでしたが、燃え後は元に戻っていましたし、お兄様も里の皆も見たと言っていたので間違いありません」
「そんなおとぎ話みたいな事ってホントにあるんだね」
「モト達も聴いた時は驚きましたが、本当にあった事だとみんなが言うので信じてます」
「話は以上です。ご清聴ありがとうございました」
「思い出すのも辛いでしょうに、話してくれてありがと」
「いえ、お二人に知っておいて頂ければ、何かあっても話がわかると思いますから、聴いていただきこちらとしても嬉しいです」
「……チュウヒさんからもお話を聞きたいわね」
「え〜! 聞く必要ないって! どう考えても逆恨さかうらみでしょ!? 私達からの鉄拳制裁てっけんせいさいからのサキとモトがもうあの頃とは違うって見せつけてやらなくちゃ!」
「それだと、関係が悪化するばかりじゃない。私とスズネは毎日顔を交わさないにしても、二人はそうはいかないわ。私たちが仲介する事で話しやすいかもしれないじゃない?」
「そんな面倒なことしないといけないの?」
「それ。スズネが言っちゃダメでしょ? 友達のために〜って聞かなかったのは誰よ」
「ぐぬぬぬ〜、わかった! 気に入らないけど、アイツからも話を聞こう!」
「そう簡単に話してくれそうに無いと思いますが……」
「それとなくやるしかないわね」
「もうお腹すいたから、今日はお開きにしてご飯にしようよ。外も暗くなってきたし」
「自由すぎない?」
「でしたら、これをどうぞ!!」

 モトは外に置いていた大きな籠を持って、机にどさりと置いた!
 置いた反動で中の虫が溢れ出て、机へと飛び散ってっ!!
 
「だから!! 虫は絶対に食べないし、見せないでぇー!!!」
「悪いけど、私も遠慮させて貰うわ。私達はきのみをお願いできるかしら」
「アタシ、干し肉持ってくる!」

 顔を両手で隠して叫んだら、オカマもそうお願いしているのが聞こえた。
 気持ち悪さのあまり、目を開けてらんない。

「ふふ、分かりました。お二人には飲み物を入れますね。虫は入れないので安心してくださいませ」

 サキがそう言うけれど、どうにも信用できないでいるのは虫のせいっ!!
 鳥肌立ちすぎて、鳥人族ちょうじんぞくになるかと思った!!

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