第十七話 底辺底辺、言わないでよ!

 

「ほぉ〜、ヤゲンの言った通りに連れ帰ってきたか」

 声の聞こえた方を見るとヤゲンっていう鳥人族よりも一回り大きな鳥人族が居た。
 羽がふんわりとしているのせいもありそうだけど、身体も大きそうな鳥人族だ。
 頭に羽が二本ひょっこりと出ていた。
 
「はい、お父様。ヤゲンから聞いていると思いますが、このお二人が王都でモトと一緒に私を助けてくれた方々であり、先程は里の近くをうろついていたサラマンダー三体を倒してくれた方々です」
「うむ、聞いておる。お二人とも先程は事情を知らず、ご迷惑をお掛けして申し訳ない」

 族長さんが頭を下げてきている。
 あと横のヤゲンも。
 ちゃんとご返事しないと!
 
「いえいえ! アタシ達も少し派手にやっちゃったのでお騒がせさせちゃってすみません」

 アタシが頭を下げるとオカマも意外にも一緒に下げてくれたのが見えた。
 なんだかんだ、アタシを立ててはくれるのね。
 
「ほほほ、構いません。ワシらも魔物の魔力を感じて慌てておった所じゃったのを助けてもらえたのはありがたいことであった。そちらが謝ることはないじゃろうて」
「そう言ってもらえて良かったです」

 アタシがそう返事をするとヤゲンはアタシ達と族長に頭を下げて、出て行った。

「さて、自己紹介がまだじゃったな。鳥人族の族長をしております。ロフクと申しますじゃ」
「アタシはスズネって言います。こっちはオカマ……えっと」
「シグと申します」
「です。アタシ達は王都で何でも屋をしていて、ここに来たのもそのためです!」
「ほうほう、スズネさんにシグさんですな。此度はサキとモトが王都でお世話になりました。魔物の件では里の手助けをして頂きまして、改めてありがとうございますじゃ」

 ロフクさんは改めて頭を下げ、サキとモトも左右に並び立って頭を下げてくれた。

「いえいえ! 依頼されただけなのと成り行きだったので何度も頭を下げなくても〜」
「いやいや、助かったのは違いない。お礼は尽くさねばなりませんとも。して、ここへ来たのはどういった御用向きで〜?」
「お父様、それは私から……」

 サキが何故か、ロフクさんへ耳打ちする。
 鳥の姿だからどこに耳があるのか不思議でならないけど、依頼の事やら窃盗せっとうの事やらを話してくれてるんだろうな。

「そんな事があったのか……いやはや、これはお世話になったと言うよりもご迷惑をかけてしまいましたな。申し訳ございませんですじゃ」

 またロフクさん達は頭を下げる。
(全くもってその通り)
 って思っちゃってるから何とも言えないな〜。

「別に構わないわ。私達は他の何でも屋がしない依頼をこなすしかないもの。何でも屋で言えば、底辺も底辺。むしろ、こうして仕事があるだけで助かっているわ。だから、謝る事なんてありません」
「それも本当だけど! 底辺底辺、言わないでよ!」
「本当のことでしょ」
「ぐぬぬぬ〜」
 
 こちとら睨んでるのによそ見してんじゃなくて、謝りなさいよ!

「ほほほ、仲の良い事で」
「良くないですよ! こんな奴!」
「とにかく、事情はわかりました。報酬金と罰金の準備をしますので里でごゆるりと……」
「父上! 今帰りました!」

 ロフクさんが話している途中で入り口から大きな声が響いた。
 振り向くと長身の鳥人族がいた。
 礼儀正しく、頭を下げてからロフクさんへと歩いてくる。

「おー、サキとモトではないか。さっき戻ったのか?」

 歩きながらそう言った。
 アタシ達にはお構いなし……と思ったらチラッと見てきた。
 なに、コイツ……感じ悪いんだけど。

「お兄様、今は……」
「帰ったか、チュウヒ。今は客人が来ておる、報告は後で聴かせてくれ」
「先に御苦労の一言があってもいいじゃないか、父上。それに人族よりも息子を少しくらい優先しても良いではありませんかな」
「私達の恩人に、里の恩人になんて事を!」
「私達の恩人? サキとモトはまた他種族に迷惑をかけたのか?」
「それは……」
「里の恩人とも言ったか? 四方に現れたサラマンダーの一方向だけを倒しただけで里の恩人呼ばわりとはな。三方向を一人で始末をつけてきた俺は里の英雄としょうされるべきじゃないか? ならば、優先度は俺だろ? 愚妹ぐまいどもの客人よりも遅かろうと優れた俺が前に出るのは当然であろう」

 そこまで言われて、何も言えなくなったサキはロフクさんの横へと立った。
 コイツ……っ!

「ふん! 最初からそこに立っていれば良い。愚妹を二人も持つと兄である俺も苦労す……っ!!」
「ス、スズネ様っ!」
「黙ってれば言いたい放題っ! あったまきたっ!」

 トンファーで殴ってやろうと思ったら、避けられた。
 チュウヒとかいうイケすかない鳥人族。
 サラマンダーを一人で始末したって言うのは嘘じゃなさそうだし、なんなら、まだ体力も残ってるって感じか。

「血の気の多い野蛮な客人だ。愚妹達の客人ならば、頷けると言うものだが」
「うるさいっ!」

 また避けられた。

「良くもまぁ、そんなエモノでサラマンダーを倒した。それに速さも大した事はない。さては、虚偽の報告をしたのではないか?」
「ちゃんと倒したってば!」

 また避けられた〜っ!!
 ならっ!

「ムキになると言うことは図星ではない……っ!」

 一気に身体強化を施して、間合いを詰めてやった。
 これなら一発叩いてやれる!

「おりゃあぁぁぁ!!」
「ちっ!」

 チュウヒも翼でトンファーを防いできた。
 こっちにはもう一つあるんだから!

「今度こそっ!」
「こちらも翼は一つではないぞっ!」
 
「二人ともやめよ!」

 ロフクさんが大声でそう言ったからなのか、アタシとチュウヒの間で突風が吹いてお互いに後ろへ飛び避けた。
 
「チュウヒ。里の英雄だと言うのであれば、サキとモトを愚妹などと言うでない。器の大きさが見えとるぞ」
「くっ」
「スズネ殿。サキとモトのために怒ってくださったのはありがたいのですが、暴力で訴えてはなりませんぞ」
「ご、ごめんなさい、つい」
「ついじゃないわよ、まったく」
「オカマも杖構えてたよね?」
「貴女を止めるために決まってるでしょ」

 オカマは文句のように言い捨てながら杖をホルダーにしまった。
 トンファー、しまお。
 
「今日の所はこれにてお開きじゃ。サキ、モト。お二人を宿へお連れしておくれ。あと、二人も長旅で疲れとるじゃろう。先に家へ帰ってゆっくりすると良い」
「あの、お父様。お二人を私達の家へご招待してもよろしいですか?」
「構わんが、それではお前たちが……」
「疲れなんてありません、スズネ様もシグ様も私達を家へ招待してくれたのですからお返しがしたいのです」
「モトもそうしたいです!」
「そうか、わかった。お二人もそれで良いですかな?」
「は、はい」
「構わないわ」
「わかりました。さ、お二人とも行きましょう」

 サキとモトに連れられて、ロフクさんの家を出た。

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