木箱からアタシ達の荷物を出しながらに。
「あのチュウヒって奴、イケすかない!」
「まあまあ。スズネ様、落ち着いてください」
「サキはあんな言われ方して、嫌じゃないの?」
「兄様からすれば、そう思われてしまっても仕方ありません。里を背負う者として強くあらねばとしているのです。私達はそれを支えるという役目で将来は下につく身。それに帰ってきた理由も知ればさらにお荷物と思われる事でしょう」
「でも……」
「スズネ、これはこの里の事なんだからそんな肩入れしないの」
「なんで? 友達がしんどい思いをしてるならなんとかしてあげたいだけだよ!」
「こう話しているだけでもサキさんとモトさんが辛い思いをするだけよ。助けられる手立てがないなら大人しくしておくのも優しさじゃない?」
オカマは木箱から荷物をアタシに手渡してきた。
たしかにサキ達の顔は暗いまま。
「だからって、何も聞かずに報酬とか罰金のお金をもらってさよならは嫌だよ」
「……はぁ、他所のことに首を突っ込んでもいい事なんてないでしょうに」
「オカマが冷たいだけでしょ!」
「はいはい、私は冷たいわよ。でも、あのチュウヒって男には思うところもあるわ。それにサキさん達のことを放ってはおけないわね」
オカマはサキとモトを交互に見ながら。
「手助けも慰めにもならないかも知れないけど、詳しく話してくれない?」
アタシもサキとモトを交互に見ると、モトは少し困ったようにアタシ達を見た後に。
「姉さん……」
サキへと声をかけた。
サキは何も言わずに俯いていた。
アタシが見た時には驚いたように目を見開いていたけど、今はどんな表情をしているのかわからない。
「サキ、話してくれない? まだ日は浅いかも知れないけど、アタシ達友達だしさ! オカマは面倒臭いとこあるけど、こうやって関わろうとするのはなんだかんだ二人のことが気になるからだし……サキ?」
アタシがそう言っていると、少し肩が震えたように見えたから少し心配になったけど、目元を拭って顔を上げてくれた。
「すみません。まさか、お二人がそんなに心配してくださると思っていなかったので」
「姉さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫。とりあえず、私達の家へご案内します」
「ロフクさんの家の前で話すことじゃなかったね」
『きっと聞こえてませんから大丈夫です』
サキとモトはまた大きな鳥の姿になり、私達は背に乗った。
二人の家はそんなに離れてはいなかったけど、歩いていけないし、落ちたら危ないってことで二人に乗るしかないんだって。
『着きました。一ヶ月ほどあけてましたから何もありませんが』
「ごゆっくりしてくださいませ」
「運んでくれてありがと! 失礼しまーす……おー!」
モトが変身を解いて、垂れ幕を押し上げてくれたからそのまま入った。
中はロフクさんの家よりも生活感に溢れてた。
太い幹が家の真ん中を通って、それを中心に円状の部屋。
壁も屋根も整えられた木も見受けられたが、自然な木の無骨さが多く感じた。
入ってすぐにダイニングなのか、小上がりになった場所がある。
そこには干し草で編まれたシートが敷かれていた。
クッションのようなものがあった。
全部、木組みで金属は使われているようには見えなかった。
ベッドが無いってことは、間仕切りされてる奥が寝室なのかな。
「なんか自然の中にいるみたい」
窓もあり、小さな垂れ幕がしてあるだけで風で揺れていた。
まぁ、生きてる木をそのまま柱として使っているし、ここ自体が開けているにしても大森林の中。
自然に溶け込んでいると思うのも仕方ないね。
「荷物はこちらに。履き物を脱いで小上がりに上がっててくださいませ」
「うん、わかった」
荷物を入り口近くに置いた。
靴を脱ぐのはなんだか変な感じだし、一風変わったシートがあるけど床に座るのも変な感じ。
でも、靴が脱げて楽になるし、座って足も伸ばせるのは疲れた足にはありがたいかも。
「人様の家であんまりはしたない事しないでくれる?」
「いいじゃん、別に。モトにごゆっくりしてくださいませって言われたんだし」
クッションを寄せて、太ももの上に乗せた。
オカマは、女性みたく話す割に女性もそう言う目で見ると自白してたし、気をつけとかないとね。
「そう言えば、モトは?」
「食べ物の調達に行ってもらいました。なにぶん、家を空けておりましたから何も置いてなくて……」
「そうなんだ。で、どんなのが出てくる予定なの?」
「またはしたない事を」
「シヤの実から出る果汁の飲み物、ギスの木に生るきのみやギスの木に根を張った果物。あとは、虫とかですね」
「……あ〜、虫はちょっと〜」
アタシが少し言い淀むと、サキはなぜか嬉々として。
「大森林には色んな虫が居るんですが、お二人はどんな虫がお好みですか? 芋虫はプリッとしててクリーミーですし、甲殻類でしたら食べ応えがあって……」
「やめて!! アタシ達、虫は食べないから!!」
「え……」
「やめて!! そのなんで食べないんですか?って顔やめて!!」
「はっ! 確かに王都のご飯には虫が入ってなかったような。でも、どれも美味しかった。……もしかして、人は虫を食べないんですか?」
「そうね。そっちからすれば驚きかも知れないけれど。食いしん坊のスズネが頭抱えるくらいよ」
やっぱり、鳥人族は虫を食べるの……。
虫って、美味しいの?
いや、食べたくない食べたくない。
「……なら、虫は私達が食べることにします」
「モト、今帰りました! 姉さんが大好きな虫がいっぱい手に入りましたよ〜!」
モトの手元にある籠には虫が色んな虫がぁっ!
鳥肌が立つぅ〜!!!
アタシが鳥人族になっちゃうくらいにっ!!
「無理っ! 絶対、食べられないっ!」
「モト。それはとりあえずスズネさんの目に入らないところに置いてあげてください」
「……わかりました。では……こっちにしましょう」
虫の籠を家の外に置き、果物やきのみの入った籠を持って入り直してきた。
流石にあの籠いっぱいの虫は夢に見そう。
「そうですね。飲みながら食べながらで良いので、先程のお話をさせてください」
そう言ったサキの顔は真剣そのものだった。

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