第十四話 その首! もらったぁ〜!!!

 

『スズネさん! どうしましょ〜か!?』
「とりあえず、オカマの作戦通りで! アタシに構わずにけまくってぇ〜!」
『でも、スズネさんに当たるかもしれません〜!』
「当たりそうになったら、叩き飛ばすから平気!」
『わかりました! でも、吹き飛ばさないように気はつけます!』
「それでお願い!」
(今の時点で腕がギリギリなんだけど、なんとかしないとっ!)

 そこからモトは上とか下とか右とか左とか方向感覚がおかしくなるくらいに避けまくる。
 視界がぐわんぐわんになってやばい。
 火の玉も何度かトンファーで叩き飛ばして、引き付けて来たけど……

(もう、左手が!)

 手綱たづなを持つ力が……入らなくなってきた。
 手綱に手を引っかけてるだけで次、振り回された……ら。

「あ……あぁぁぁあぁ〜!!!」
『ス、スズネさ〜ん!!』

 落ちてる〜ぅ!!
 助けには……来れないよねっ!
 サラマンダーに追われて避けるのに必死だし、ヤバい!
(どうしよどうしよどうしよ〜!?)

「と、とりあえず、肉体強化と防御魔法を張って地面とぶつかっても大丈夫なように……いや、無理無理無理〜!! 絶対死ぬ〜!!」

 手足をバタバタさせた所でモトみたいに飛べる訳でもないのにやってしまう。
 少しでも生きられるようにと足掻あがく。
 意味ないけど。
 どんどんと地面が近づいてくる、いや、アタシが近づいてるのか。

「わぁー!!! 誰か助けて〜!!! いやぁ〜〜〜ぁぷ!」
『なんとか間に合いました。スズネさん、大丈夫ですか?』

 地面にぶつかったのかと思った……
 まだだいぶ距離あったからそんな事ないのに。
 高い所から落ちるってあんな感じなんだ……
 あぁ、生きている心地がなかった分、このふかふかの羽毛布団で受け止められるのは堪らないかも。

『あの? スズネさん、生きてらっしゃいますか?』
「い、生きてるよ! ありがと、サキ! もう死んだかと思った〜」
『間に合って良かったです。次はモトを助けましょう、あの子もギリギリだと思うので』
「そうだね! さっきモトとやったんだけど、サラマンダーに奇襲掛けられる? あっちもすんごい速さで飛んでるけど……」
『風魔法も駆使して、追いつけます。モトもだいぶ疲れてるみたいですし、あれでも速度は落ちてますから』
「オッケー! なら、やるっきゃないね!」
『スズネさんも大丈夫ですか?』
「うん! 次は右手で手綱を持っとくから平気! 一体しか仕留められなかったらごめんね」
『そこは心配ないですよ。シグさんも居ますから。では、行きます!』
「へ? オカマは背中に乗ってな……ぶわぁ!」

 こっちの返事が聞かずにそのままサキは羽ばたいて高速飛行し始めた。
 本当に右手で手綱を持つ事にして良かった〜。
 じゃなかったら、また落下地獄だった。
 先に肉体強化しといたのも良かった。

(オカマ云々はどうでも良いとして、やることやらなきゃ!)

 またトンファーの持ち手からさっきのイメージと同じ魔力の刃を作り出した。
 サラマンダーの首を切り落としたお墨付き!
 左手の握力が少し気になるけど、いけるはず!

『もう追いつきます! 準備を!』
「もう出来てる! そのまんま行って!」
『わかりました!』

 またもう一回羽ばたいて、さらに速く飛ぶ。
 モトよりも速いかも、でも!

「その首! もらったぁ〜!!!」

 サラマンダーの横を飛び去りざまに魔力の刃で首を切り落とした。
 サラマンダーの首は落ちていき、身体も力が抜けて落ちていくのを確認した。

(よしっ! でも、またこっちが標的になるよね〜?)

 案の定、サラマンダーはモトではなく、こちらへ向かって飛んでくる。
 ただ、さっき追われた時よりも遅くなっているように感じた。
 サキの方が速いということもありそうだけど、これならもう一回やれるかも!

「サキ、もう一回行ける!?」
『いえ、その必要はありません。このまま引きつけながらシグさんの所へ向かいます!』
「え! オカマの所に!? え、作戦変更?」
『変更も何もシグさんはそのつもりだったみたいですよ!』
「聞いてないんですけどぉおおぉ、どわわ〜!!」

 方向転換のせいで振り落とされそうになった。
 
『スズネさんが矢継ぎ早に戦いに行くからですよ』
「と、とりあえず、後ろのサラマンダーはオカマに仕留めてもらおう!」

 サラマンダーの火の玉を避けながら、オカマの方へと飛んでいく。

(こっちにオカマが居るの? ……あ、居た。黒豆みたいなのがポツンと)
「オカマ〜! 残り一体よろしくぅ〜!!」

 アタシの声が聞こえたのか、タイミングが良かったのか。
 杖を構えて、魔力を練り始めているのが見えた。
 ありありと魔力があふれているのを見るに、髪の毛を使っての大魔法ってとこだね。

『大いなる地の力をここに示さん』

 呪文を唱えているオカマが揺れているように見えた。
 よく見ると地面が揺れているのがわかる。
 アタシ達の後ろでサラマンダーが炎の玉を吐き出そうとする気配がした。

『我らの敵をその力を持て、穿うがち糧にせよ』

 サキはオカマのすぐ近くで軌道を変えて、炎の玉を避けた。
 それは遠慮なくオカマに向かうが、その心配はいらない。
 オカマの目の前には鋭利に尖った大きなトゲ岩が地面から出てきていたのだから。
 
『アースニードル・アシフィレェン』

 その岩を土が覆い尽くして、炎の玉へと飛んでいった。
 炎の玉はオカマの魔法とぶつかった。
 土が剥がれたもののトゲ岩はサラマンダーへと飛んでいき、容赦なく胴体を貫いた。

「ギャァァァアァァ!!」

 叫び声をあげて、地面へと落ちた。
 すると、落ちた地面が窪み始めた。
 地面がサラマンダーを丸呑みにするように土で覆い被せた。
 他のサラマンダーの死体を見ると地面に呑まれいくのが見えた。
 地面に埋める事もさっきの呪文で命じられていたようだ。

「こんなものかしらね」
「やるじゃない、オカマ〜!」
「とりあえず、降りてきなさ〜い! 少し休憩にするわよ」
「え〜、このまま里に入れば良くない?」
「二人を疲れさせたままじゃ、可哀想でしょ。それに私達と族長の仲介をしてもらわないと話がややこしくなるわ。それに私たちの荷物のこともあるのよ?」
『私もそれが良いと思います』
『も、モトも……流石に疲れちゃった』 
「それもそっか、なら、先にアタシとサキで荷物を持ってきておこ! それならモトもゆっくり休められるでしょ?」
『そうですね、モトはゆっくりしててください』
『ありがとうございます〜』

 モトはゆっくりと降りていった。
 大きな鳥の姿から鳥人族の姿に戻り、草原で座り込んだ。
 
「すぐに帰ってきなさいよ〜」
「そんな道に迷うことないのにねぇ? ……ねぇ?」

 サキから返事はないの怖いんだけど。

『……スズネさん、荷物はどこに隠したんでしたっけ?』
「え〜っと、来た方向に戻れば良いと思う」
『わかりました、こっちですね』
「いや、そっちは里に向かっちゃうから!」
『では、こっちですか?』
「高く飛んで、上から探せば見つかるはず」
『そうですね……あ、ありました!』

 サキの方向音痴のせいで荷物が見つからないかと思った。
 木箱は四個あるから二往復して、アタシとサキも一休みすることにしたのだった。

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