第十二話 はずんでもらうからね!

 

 お昼を食べてからまたモト達の背中に乗って、しばらく。
 乗ってるだけだからちょっと眠くなってきたかも。

『あれは?』
「ふぁ〜、なに?」
『魔物に襲われてるみたいですよ!』
「え!?」

 落ちないように辺りを見下ろすと、騒がしくしているのが見えた。
 金属がぶつかり合う甲高かんだかい音や雄叫おたけびのような声も聞こえてきた。
 馬車が三台も止まってる。
 その近くで人っぽいのと魔物っぽいのが争っているっぽく見える。

「魔物が出やすいって言ってたのは本当みたいね」
「そんなの聞いてたの?」
「ええ、グウェドさんが言ってたでしょ」
「言ってたっけ?」
『そんなことより助けませんと!』
「そ、そうだね!」
「魔物はゴブリンってとこかしら……森が近いからそこにみついたのに見つかっちゃったんでしょうね」

 黒緑くろみどりっぽいのがそうなのかな?
 確かに森が近い道で戦ってるし、ゴブリンに目をつけられちゃった感じか。
 
『大勢居ますね。加勢しないと危ないかもしれません』
「えっと! どうしよ!」
「スズネとモトさんはこのまま向かってちょうだい。私達は上からゴブリンの住処すみかを探すわ」
『わかりました!』
「おけ! って自分だけ楽しようとしてない!?」
「してないわよ。ゴブリンとずっと戦ってたいなら構わないけど?」
「もう、わかった。見つけたらついでに住処潰してよね! モト、戦ってる人たちを助けるよ!」
『はい!』
『住処の方は任せてください』
「よろしく!」

 オカマとサキは森の方へ。
 アタシとモトは戦ってる所へ向かう。

「近くまで来たら、飛び降りて戦うからもうちょっと低く飛んで」
『モトはこの姿のまま、応戦しますね!』

 モトが飛んで寄っていくと、戦ってる人やゴブリンがこちらに気づいたようで手を止めた。
 だが、それがすきになって人を襲おうとしているゴブリンもいた。

「アイツからっ!」

 肉体強化して、モトから飛び降りる。
 モトもアタシが降りたのを見越して素早く飛んだ。
 戦っている所の真上を飛んだおかげで強風が起こり、目をくらませた。
 アタシは強風に受けて、落下の速度が上がった。
 人に襲い掛かろうとしていたゴブリンの顔面を踏みつけてから着地した。
 飛び降りながらにトンファーの準備していたからすぐに乱入する。

「助けるからには、報酬は貰うよ!」
「助かる!」
「報酬は、ひぃー! 後ほど!」
「はずんでもらうからね!」

 顔面を踏んでひるんでいたゴブリンのあごにトンファーを叩き込んだ。
 叩き込まれたゴブリンは歯がくだけ、口端から血を吹き出し倒れた。

「野郎ども! 姉ちゃんに負けないように戦え!」
「「「おーーー!!!」」」

 人間にしては毛むくじゃらだなと思ったら、獣人じゅうじんだったみたい。
 顔も人よりも口鼻が突き出てるし、大きく開いてるし、牙も立派なのが生え揃えてあるし。
 軽く防具を装備している獣人の人達と力を合わせて、こんぼうにボロ絹のゴブリンを倒していく。
 こっちはアタシを含めると十一人居るけど、ゴブリンの方は二十匹くらい居た。
 馬車を引いてる馬を狙うゴブリンも居るけど、獣人の人が守ってくれてた。
 モトも下降しては、風魔法でゴブリンに深傷ふかでを与えていた。
 死にぞこないのゴブリンも周りの人達が仕留めてくれた。
 数はどんどんと少なくなっていき……

「これでラストっ! かな?」

 最後のゴブリンをトンファーで殴り倒すと、獣人の人達が雄叫びを上げた。
 思わず、耳を押さえてしまうくらいに大きな声でびっくりした。

「獣人って、すごい声が大きいんだ。耳がキーンってする」
「姉ちゃん、助かったよ」
「いえいえ! 報酬はもらうからね!」
「がはは、そうしてくれ! にしても、あの大鳥、あの姿ってことはまさか……」

 獣人の人が降りてきたモトを見て話していると、ドゴンっと炎が一気に舞い踊るのが見えた。

「な、なんだっ!」
「ヒィー!!」
「まだ何かいるのか!?」

 獣人の人達は驚いて、武器を構えた。
 怯えている人もいた。
 
「えぇ〜……あっ! 多分、アタシの仲間がやったんだと思う」
「「「えっ!?」」」

 アタシのことを見て、あんぐりな獣人の人達。
 サキが飛んでくるのを見て、アタシが指差すとさらに顎が外れるくらいに驚いていた。
 サキがモトのそばに降りてきたからアタシも駆け寄った。

「住処は潰せた?」
「問題なしよ」
『シグさんの魔術はやはり、すごいです』
『モトも見たかったです』
「森ごと焼きそうな魔術、打ってなかった?」
「ゴブリンと住処だけ焼き切ったから大丈夫よ」

 アタシ達だけで話していると、獣人の人達も集まってざわついていた。
 報酬の事で話してるのかな?
 思いつきだったけど良い仕事したもんね〜。

「しっしっし」
「なに、笑ってるのよ」
「別に〜」

 オカマと話してると、服を着た商人と思える獣人さんが話しかけてきた。
 
「た、大変助かりました。まさか、助けていただけるとは」
「いえいえ〜、危なげなだったからね!」
「まさか鳥人族のお方と強い方に巡り会えるとは思いもしませんでした。お礼をさせて頂けませんか」

 ふふ、命の恩人には報酬よね。

「だったら、お金を……」
「干し肉か、食べ物を分けてもらえないかしら」
「ちょっとっ!! なんで!?」
「鳥人族の里には、肉料理がないって聞いたことがあるの。もし、滞在することになったらしばらくお肉が食べられないわよ?」
「え、そうなの?」
『はい、私達は火を扱わないので王都のようなお料理は準備出来ません』
『栄養豊富な虫ならたくさんいますから、心配ありませんよ』

 それって、虫を……

「干し肉! 干し肉をたくさんちょうだいっ!」
「は、はい! わかりました」

 商人さんに食いかかると相手も驚いていた。
 虫を食べるだなんて考えたくもない!!

「姉ちゃん達、ゴブリンはどうするつもりだ?」
「どうもしないけど?」
「じゃあ、奴らの左耳を集めさせてもらうぜ! こっちはギルドに渡せば、討伐報酬が手に入るからな」
「なにそれ、良いなぁ!」
「その分、俺たちの干し肉も少し渡すからよ」
「じゃあ、それで良いよ!」

 商人さんから荷馬車から布いっぱいに包まれた干し肉を渡された。
 さっき言った護衛の獣人さん達が分けたのも入っているらしい。

「住処も潰したって聞いたし、さっきの炎のとこにも行くぞ!」
「今回の護衛の報酬と討伐報酬でかなり稼げそうだな」
 
 十人くらいの護衛の獣人たちの七人程がゴブリンの左耳を刈り取りに行ってしまった。

「僕たちは王都から国に帰る途中で襲われてしまいまして。護衛がいるからと油断していたところを襲われ、ゴブリンの多さに手をあぐねていたのです」
「そうだったのね」
「ところで、あの鳥人族のお二人方はもしや……」
「ええ、鳥人族族長の娘姉妹よ……」

 商人さんとオカマが何やら話していたけれど、そんなことより干し肉嬉しい。

「これでしばらくは大丈夫そ!」
『虫も美味しいですよ?』
「やめて、何も言わないで!」
『え、あ、すみません?』

 想像したくない!
 食卓に虫が並ぶところなんて……
 
「あの人たちはしばらくここに居るそうだから、先に失礼しましょ」
「りょーかい! 干し肉はモトに持ってもらうから」
「はいはい、落とさないようにね」
『お任せください』

 モトの木箱の片方に干し肉を入れると、掴み直した。
 アタシ達がモトとサキの背に乗ると獣人族達と別れた。
 獣人の商人さんはオカマが名前を聞いてたし、また会った時はオカマに任せちゃおっと。

「干し肉〜、ほっしにく〜っ」
 
 再び鳥人族の里へと飛び始めた。

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