第十三話 まだ里には着かないの?

 

 獣人族じゅうじんぞくの商人と護衛を助けてから飛んで、村も道も少なくなって、草原や森が増えてきた。
 空を飛ぶのは良いけど、おんなじような風景ばったりできてきたな

「まだ里には着かないの〜?」
『もう見えてますよ』
「え? どれ?」

 村なんてない。
 見えるのは大きな木々がもっさりと生えているのだけ。
 アタシが知っている森よりも随分と背が高い。
 いや、背が高いってもんじゃなくない?
 山だね、あれはもはや森というより山だよ。

「うーん、もしかしなくてもあの山っぽい森に向かってるって事は」
「あそこに鳥人種の里があるのよ」
「え」
『シグさんの仰る通り。あの森こそモト達の生まれ育った森、ラグユラシル大森林だいしんりん
『大森林と言っても、木々の根元には底なしの湿地が広がってありますから、またの名を死の沼地と恐れられてたりしますね』
「森林なの? 湿地なの? 沼地なの?」
「人や多種族が入り込めない場所で、山のように育ち広がるギスの木が生み出したラグユラシル大森林。飛べる鳥人族にとって良い環境よね」
「モト達は何を食べてるの?」
『モト達はきのみとか沼地や木々にいる虫を食べてますよ』
「む……あ、火は使わないから料理はしないんだっけ?」
『あまりしませんね、食べれるようにするために毒抜きや泥抜きはしますけど』
『私が王都の食べ物に手を出してしまったのは、食材もお料理も美味しそうだったので、つい……』
「やっぱり、食べ物はあまり期待できなさそうね」
「べ、別に期待したわけじゃないから! きのみと干し肉があれば大丈夫だし!」
「どうだか……それよりも二人ともあれはいつも通りだったりするのかしら?」
「あれって?」

 オカマの視線を辿たどって、山みたいな森の根元。
 そこにフラフラと炎が浮いてる。
 一個じゃなくて、三個くらいが寄ったり離れたりと何かを伺っているように。

『あんなものは初めて見ます!』
『見たことも聞いたこともないですね』
「やっぱりそうよね」
「あれ何? 炎が羽ばたいてるみたいに見えるけど」
「サラマンダーね、サキさん達よりも小さいみたいだけど歴とした魔物よ」
『なんで、魔物がこんなところに』
「わからないけど、里の人達に助けを呼んで……」
「倒すしかない!!」

 オカマが何か言ってたけど、そんなの無視。

「ちょっと勝手に」
「魔物なんでしょ! さっきみたいに倒すしかないじゃん!」
「そうだけど、やり方があるでしょ。考え無しに戦って、こっちがやられる可能性も考えないと」
「アタシとサキ達が居れば、あれくらい倒せるって。さっき試した事もあれならやれる機会だし!」

 ゴブリンの時は獣人の人達がいたからできなかったけど、ここなら問題ない。
 大森林の周りは開けた草原だし、サキ達も飛びやすいし。
 
「休憩の時にやってた?」
「そう! 二人ともやれるよね!?」
『モトは大丈夫です!』
『私も大丈夫ですが、シグさんはどうしましょうか?』
「その辺に捨てれば良いって」

 その言葉を聴いて、ため息をついた後に「まったく」と呟いたのが聞こえた。

「その前に荷物をどうにかしないといけないでしょ」
「あ、そっか」
『私も頭にありませんでした、お恥ずかしい』
「あそこ、草の生い茂ってるところにしましょ」

 オカマが指差した先は草原の中で草が生い茂ってるだけの所だった。

「あんな所じゃ、誰かに持っていかれちゃうって!」
「見渡す限りサラマンダー以外に生き物が見当たらないわ。アイツらのおかげで近づけないんでしょうね。上からならわかりやすいんだし、あそこで良いでしょ」

 なるほど、オカマのくせによく頭が働く。

「何か、失礼な事考えてないかしら?」
「別に〜?」
『では、降下します』

 降りて手早く荷物を固めて置き、早速作戦会議を開くことにした。
 
「スズネとモトさんでサラマンダーの注意を引いてちょうだい。私は少し離れたところでサキさんに降ろしてもらうわ。サキさんは私を降ろしたら、加勢してあげて。私はバレないように近づいていくわ」
「荷物番はなし?」
「取り立てて、危ない生き物はいないでしょうからね」
「オカマが加勢する前にやっつけてやるっ!」
「そうしてもらえると疲れなくて済むわ」
「アタシと二人がいれば、あんなの楽勝! モト! 先に行って一体くらい倒しちゃお!」
『は、はい!』

 モトの背中に乗ると少し強張っているのを感じた。
 アタシと違って、怖がってそうな感じ。
 
『無茶はしないようにね』
『わかりました、姉さん』
「スズネもよ」
「わかってるって、サキも早くきてね! 実戦で試してもみたいし!」
『わかりました、シグさんを安全なところに降ろしたらすぐに』
 
 心配そうに見送る二人を置いて、モトと一緒にサラマンダーへと向かう。
 大森林へ向かってた時よりも少し飛ぶスピードが遅い気がする。
 アタシはモトの首元に優しく撫でた。

「モト、怖くないよ。アタシがついてるからね」
『……バレてましたか、恥ずかしい』
「戦った事はあるの?」
『ないんです。モトや姉さんは里のみんなが採ってきたものや狩ってきたものを食べるばかりで採取さえした事もなくて……』
「そうなんだ。初めては怖いけど、やればなんとかなるもんだよ! アタシもリン姉と初めて手合わせした時は怖かった。他の人と稽古けいこするのもね。実戦も状況によっては怖いし、痛いけど。やってみなくちゃ分からないし、なんとかするしかない。今も同じ。魔物と戦うのは初めてだったりするの」
『え! シグさんが来る前に倒すってさっき……』
「アイツの前で泣き言なんて言いたくないし、アタシはアタシで強くなりたいんだ。初めての相手だからって尻込みしてらんない。リン姉よりも強くならなくちゃいけないんだし! だから、大丈夫! モトに怪我はさせずにあんなの倒しちゃうから! その代わり、モトにもちょっと手助けして貰えれば、アタシもちょっと楽できるんだけど〜……どうかな?」

 こっちに視線を向けたままのモトを見た。
 ちょっと視線を泳がせていたけど、見つめ返してくれて。

『わかりました、モトはちょっと怖いですけど。スズネさんの手助けをしたってみんなに言えるように頑張りますっ!』
「ありがと! じゃあ、早速だけど、奇襲をかけたいから本気で飛んで!」
『え、でも、さっきスズネさん、落ちてましたよね?』
「あ、あれは力加減、間違えただけだから! 肉体強化とか掛けて、アタシも本気でやるから大丈夫! 気づかれる前に一体はやるよ!!」
『わかりました! しっかりと捕まっててくださいね!』

 モトは翼を一回、二回と大きく羽ばたかせた。
 そうすると一気に速くなった。風景が線のように流れていく。
 アタシの身体もモトから離れて、左手で手綱たづなを持って掴まってるので必死。
 肉体強化もかけてなかったら、やっぱりえられてないな、これ。
 
(先にトンファー持ってて良かったぁ〜! こんなの取り落としちゃうって)

 右手にはトンファーの持ち手を持ってる。
 でも、いつもと違うのは魔力の流し方。
 腕に添えるように魔力を流すけど、その逆へ流して、リーチを稼ぐ。
 剣のような切れ味と槍のような鋭さをイメージした魔力の刃を作る。

『スズネさん!』

 そうこうしているうちにサラマンダーに程近くなった。
 やるっきゃないっ!

「おりゃあー!! その首もらったぁーーー!!!」
 
 モトはサラマンダーの横を地面に対して垂直に飛び去る。
 アタシはモトのスピードにあわせて、トンファーを振り抜いた。
 サラマンダーの炎をもろともせずに魔力の刃がサラマンダーの首を跳ね飛ばした。

「やった!! やったよ、まず一体!!」
『やりましたね!!』
「うん!! え!?」

 顔の横を炎の球が飛んでいったような?

『さ、サラマンダーが追ってきてます〜! 炎の玉を飛ばしてきます〜!!』
「モト! また速く飛んでぇ〜!! またリボンが燃えちゃう〜!!」

 思ってたよりやばいかも〜!
 モトの速さについてくるとか予想外なんだけど!
 
「サキ〜! 早く来て〜!」

 少し情けないけど、そう叫んでしまった。

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