第二十三話 なんでそうなるのよ

 

「あんなのズルっ子じゃん!!」
「落ち着きなさい、周りに迷惑よ」
「だって、アイツだけ最終戦だけなんてズルでしょ! 私達は一回戦から戦い通しなのに!」

 なだめても騒ぐスズネを他所に周りを一瞥すると、数人が頷いている。
 思わない人もいない訳ではないのね。
 私達はサキさんとモトさんに連れられて、鳥籠神鳥祭とりかごしんちょうさいのトーナメント抽選に訪れた。
 サキさんもモトさんも着いて早々に準備があると私達と別れた。
 しばらくして気がついたのだが、チュウヒはシード枠。
 しかもトーナメントの決勝戦だけ戦うという特別扱いだった。
 そんなトーナメント表を見て、スズネが騒がない訳がなく、抽選に訪れてからイライラしていた。
 ついに我慢できなくなったようで私に愚痴を言う始末である。

「もう決まっている事でしょうから仕方ないじゃない。試合となれば、怪我をする事もあるわ。族長の長男なら何かあれば一大事よ。優遇ゆうぐうされるのもやむなし。とりあえず、愚痴ぐちを言うのをやめなさい」
「愚痴じゃないですぅ〜! これは抗議ってやつよ! アタシ達や他の参加者はみんな一試合から戦って、一日一試合と言っても疲れてるのにあんまりじゃない!」
「そうだ! そうだ!」
「誰かは知らんが、よく言った!」
「サキ様とモト様が連れてきた人だってさ」
「流石はお二人が連れてくる方だけあるな」

 スズネが騒ぐと周りからも同意の声が上がり始めた。
 あれは誰だと言う声もあるが、サキさんとモトさんが連れてきた人だと口々に伝えられる。
 あんまり騒ぎの中心になって欲しくないのだけれど、これは私の手ではどうしようもない。

「何を騒いでおるんじゃ?」

 助かったわ。
 ロフクさんならなんとか治めてくれるはず。
 
「あ、ロフクさん! なんでアイツだけシード枠なの!? ずるい!」

 スズネは手を振り上げて大きな声でロフクさんへと呼びかけ、ロフクさんもその問いかけを聞いてくれたようだ。
 
「ほほほ、仕方あるまい。鳥籠神鳥祭の間は里中の皆が参加資格がある。日頃、見回りに出ておる者も漏れなくの。その者が試合に出ておる間は誰がそれを務めると思われますかな?」
「えっと、試合に出ない人が代わるとか」
「そうですな。じゃが、またとない祭に里の者を労ってもやりたいのはワシも思う所じゃ。それはチュウヒもまた然り。見回りの代わりに先んだってチュウヒがする事でそれをしようとしておるのじゃ」
「え……じゃあ……」
「左様。シード枠なのは高みの見物をするためではなく、皆の代わりに里を守っておるからこそ。皆が安心して、試合に参加、観戦することができるようにしておる。それくらいは許されても良いじゃろうと判断してのことじゃ。皆の者、わかってくれたかの?」

 ロフクさんの説明を聞いて、周りも納得の声が多くなった。
 
「そうだったのか」
「ま、まぁ、俺はわかってたけどなぁ」
「お前も不服そうにしてたじゃねぇか」
「チュウヒ様から代わりは任せろと言われたぞ」
「そういうことは早く言えよ」

 どうも直々に言われた人も居るようだ。
 ロフクさんの言葉を疑う訳ではないが、間違いなさそうだ。

「そ、そうならそうと早く言ってほしいんだけど!」

 私がロフクさん達に手を振ると、頷いてくれた。
 後でお詫びを言っておかないといけないわね。

「さ、騒ぎが落ち着いた所で抽選を行う。参加する者は列を乱さずに順番にくじを引くのじゃぞ」

 ロフクさんの右側にサキさん、左側にモトさん。
 ロフクさんの目の前にくじ引きの箱が置かれている。
 不正がないように三人で見張り、引かれたくじの数字とトーナメント表の数字にそれぞれ名前が書かれていった。
 準決勝戦では右ブロックの勝者と左ブロックの勝者が戦うことになっている。
 その試合の勝者が決勝戦でチュウヒと戦うことになる。
 私達の抽選の結果は左ブロックの左端、奇しくもシード枠に書かれているチュウヒの隣に「何でも屋」と書かれた。

「トーナメント表をいじって、一試合目から戦えるようにしない?」
「やめなさい」

 他の参加者の名前も書き連ねていく中、黒一色の鳥人族の抽選となった。
 少し周りも騒ついたので私も見ていると、引かれたくじをサキさんが確認して、モトさんがトーナメント表へ書く。
 右ブロックの中程に書かれた名前は「ラースカ連合」だった。

「あれが五人で参加するかもしれない相手ね」
「見た目が黒いだけでみんなとそう変わらないじゃん。そんなに警戒しなくても良くない?」
「見た目で侮るなかれ、よ。スズネも注意してなさいな」
「はいはい」

 何も言わずに去っていく、カラス連合の一人がチラリとこっちを見てきた。
 だから、どうと言う訳ではないけれど、あちらもこっちを警戒しているのは感じられた。
 視線は私達から外れ、そのまま里長の家から出ていく。

「参加できれば、それで良いって感じね」
「ここには目ぼしい敵は居ないと思ったんじゃない?」
「へぇ〜……ボコす相手が一人増えたかも」
「一人じゃなくて、五人増えたって思っときなさい」

 ここ最近のスズネの好戦的な物言いに少し気が気でないが、騒ぎを起こさないならそれでいい。
 要注意のラースカ連合の抽選が終わってからもトーナメント表に名前は揃っていった。
 カラス連合と別のブロックになれたのはかなり有難い。
 右ブロックで鳥人族との戦い方を試しながらに勝ち上がる事を目標にすれば良いのだから。
 その集大成として、大きな二戦に勝つ。
 順当にいけば……の話だから、左ブロックの相手も気をつけてかからないと。
 三勝すれば準決勝戦、そして、決勝戦。

「とりあえず、三勝して、ラースカってのとアイツをボコボコにする!」
「その三勝の方が大事なのを忘れないように。三戦の中で戦い方を試さないと最悪、準決勝で終わっちゃうわ」
「補助魔法が使えるなら大丈夫だって」
「それ、一辺倒いっぺんとうじゃかなわなくなるって言ってるの。好戦的なのは良いけど、頭も使って戦うわよ」
「……オカマもボコボコにしないとかな?」
「なんでそうなるのよ」
「サキとモトが来るまで、作戦練さくせんねろっか」
「早速頭使いなさいよ、おバカさん。こんなところで作戦を立てようものなら、一回戦で敗退になるわよ」
「じゃあ、どうするの!?」
「余所者の私達がやることは、相手を知ることからよ。私達が持ってきた美味しいきのみでお話を聞いて回るわよ」

 かばんにきのみをありったけつめてトーナメント抽選に参加していた。
 流石に背負いっぱなしはつらいので壁際に寄せて、私が見張っていた。
 ちなみに、抽選はスズネが引いた。
 サキさんとモトさんを待つ間にトーナメント表を見にきた人達にきのみを使っての情報収集を始める。
 私がかばんを背負って、スズネがきのみを渡す。
 かばんは重いけれど、私は聞き取りをするのなら動き回らない。
 私の近くに来た人へスズネがきのみを渡せば、動き回らなくても済む。

「きのみ、どうぞ! かばんを背負った無駄に髪の毛が長い人とお話ししてくださいねぇ〜!」

 スズネの声掛けに少し気掛かりだったが、食いつきは良かった。
 
「あ、どうも」
「って、これ! 俺らじゃ、あんまり食べられないきのみだよな?」
「ゴンリの実じゃねぇか! 姉ちゃん、俺にもくれよ!」
「はいは〜い! その代わり、そこの髪の毛が長い人とお話ししてくださいね!」
 
 サキさんとモトさんは私達に気を遣って、高価なきのみを食べさせてくれていたらしい。
 そのおかげで食いつきがいいのであって、スズネの声掛けのおかげではないだろう。
 そうこうしているうちに情報は集まっていった。
 思ったよりも鳥籠神鳥祭に参加する常連たちが左ブロックに居たようで良い情報を手に入れることができた。
 私達が戦うであろう相手の情報はもちろん、ラースカ連合の情報も少なからず手に入った。
 チュウヒに至っては接近戦も遠距離もひいでているらしい。
 三方のサラマンダーを狩った腕前は伊達ではないようだった。
 きのみが無くなり、情報を整理しているとサキさんとモトさんが戻ってきた。
 帰った後はきのみと干し肉を食べながらに作戦を練り、床に着いたのだった。

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