第二十七話 計り知れますからな

 

 鳥籠神鳥祭とりかごしんちょうさいの三日目。
 準々決勝が取り行われる今日は、観客の数がまた増えていた。
 準々決勝ともなれば、もはや、仕事どころではなくなった鳥人族もいれば、仕事が終わり祭へとり出せる鳥人族もいるのだろう。
 その盛況っぷりは騒がしいほどであり、はたから見ても何を言っているのかわからない程だ。

「レディース アンドゥ ジェントルマ〜ン!! 鳥籠神鳥祭の三日目! 本日は準々決勝が取り行われますっ! いやぁ〜、賑わっておりますねぇ! 今日も司会は私、ニワノ・コケコッコーがお送りいたしま〜すっ!! 他国の何でも屋がまさかの準々決勝に上がってきております! 今日も今日とて皆様が気になっている他国の何でも屋が本日一回戦目戦います! 相手は、里の参謀さんぼうを任されている里一の魔法使いワゲハシ様だぁ~!! 何でも屋のスズネ選手とシグ選手はどう戦うのでしょうか!? 早速、登場していただきましょう! 選手の入場です!!」

 昨日と同じく、向き合うように選手たちが姿を現した。
 歓声は昨日より大きく、スズネとシグに対する声援も聞こえてきている。
 右側は鳥人族が一人だけ、左側は二人の鳥人族の足を掴んでいる人間の姿があった。

「左翼〜! 他国の何でも屋〜! スズネ選手! シグ選手!」

 先に鳥籠の中へ入場したスズネとシグから紹介となった。
 昨日よりも歓声が大きいこともあり、スズネは昨日よりも増して、両手をあちこちに振る。
 シグは昨日と変わらず、対戦相手のほうをじっと見ていた。

「右翼~! 里一の魔法使い、ワゲハシ選手~!」
 
 ゆっくりと入場してきたワゲハシ。
 ワゲハシの左手には先端に水晶の球がついた杖が握られていた。
 魔法で翼の先を人の手に変化させているようだ。
 籠の縁に降り立つと、杖を掲げて声援にこたえていた。
 サブヤハよりも体が大きく、翼も大きい。
 早く飛べないのも頷けた。
 杖をおろして、何でも屋の二人を見て言葉をかけてきた。

「お初にお目に掛かります。紹介通り、里の参謀をつとめさせて頂いておるワゲハシと申します。この度の試合よろしくお願いいたします」
「ど、どうも、スズネって言います! こっちはオカマの」
「シグと申します。参謀たる方がなんでトーナメントに?」
「ほほほ、これでも魔法使いの端くれ。自分の実力がどの程度なのか、知りたくもなりましょう。第一試合を拝見したところ、シグ殿も自信があっての参加であればわからないこともないでありましょう。それにサキ様とモト様が連れてきたお二人がどれほど腕が立つのかも気になっておりましたからな」
「実際に戦って確かめたいと」

 シグはそう言いながら、腰のホルダーから杖を抜き出し構えた。
 
「左様。ルール内の試合になるが、どのような心根を持ち合わせているかは計り知れますからな」
「え、アタシたちのことを良く思ってない?」
「そういうわけではありませぬよ……さて、皆を待たせるのはこれくらいにして、始めましょうぞ」

 ワゲハシが司会の方を見て、頷くとそれを見たコケコッコーも頷いた。

「さて、両者の自己紹介と会話が終わったようなので、試合を開始いたします! 勝者は果たしてどちらになるのか! どんな戦いになるのか目が離せないことでしょう!! レディー!!」

『コケ! コッコォ〜っ!!』

 高らかと大きな鳴き声が会場に、ラグユラシル大森林に響き渡る。
 響きが収まる前からスズネは動いた。
 肉体強化を瞬時に付与して、ワゲハシへと一直線に飛んでいく。
 スズネの拳が当たるという刹那、ワゲハシは大きな翼をはばたかせた。
 すると、突風が吹きれ、スズネの拳は当たることなく体ごと吹き飛ばされた。
 驚きながらも態勢を立て直したスズネは無事に着地した。

「そう来ると思っておりましたぞ。最も思っていたよりも速く、こちらも驚きましたがな」
前情報まえじょうほうと昨日の試合の通り、すさまじいわね」
「ほほほ、昨日の試合は楽しませんでしたがな。お二人が相手ならば楽しめそうですな」

 里一の魔法使いの名は伊達ではなく、あの突風ははばたいた風に魔法でさらに強く編まれたもの。
 ワゲハシの第一試合は突風だけで相手を場外に飛ばし、勝利していた。
 スズネの速さに驚いていたこともあり、攻撃をしのぐためだけの突風でよかったと言える。

「ま、アタシならあれでも場外には飛ばないけどね」
「そうでありましょうな。では、これならば」

 ワゲハシはまた大きく羽ばたいた。
 生み出された突風はスズネとシグへ吹き荒れたが、踏ん張れば耐えられないことはない。

「だから、これくらい……わっぷ!」
「これは……」

 過ぎ去った突風が再び二人を襲う。
 次は右から、後ろから、左から。
 勢いは弱まることなく、二人に襲い掛かった。

「さらに、増やしてしんぜよう」
 
 ワゲハシはさらに二回羽ばたき突風を二人へと向かわせる。
 三つの突風がスズネとシグを襲い続ける。
 耐えられるには耐えられるが、耐えきった後に次の突風が襲いかかり身動きが取れない。
 
「思ったよりも厄介な魔法の扱い方ね」
「ほほほ、褒められても突風しかありませんぞ!」

 気を良くしたワゲハシはさらに二回羽ばたき、計五つの突風をあやつり、二人を襲う。
 突風が吹きすさぶ間隔が狭まり、シグが態勢を崩した。
 
「まずい」
「もらった」
 
 ワゲハシは見逃さずに、シグの足元に突風を向かわせ、シグを転ばせた。
 そして、違う突風でシグを空中へ舞い上がらせ、突風がさらに吹きすさぶ。

「このまま、場外に飛ばさせてもらおう!」

 突風に捕まったシグはそのまま場外へと運ばれる。

「させないっ!!」

 違う突風を耐えていたスズネは次の突風が吹く一瞬を見計らって、シグの救出へと試みる。

「させませんぞ!」

 ワゲハシもさまたげるべく、スズネへ突風を向かわせる。
 だが、あまりの速さに突風たちはスズネの通った後を吹いた。
 スズネの足に突風が当りはしても、邪魔をすることはできずにシグの足をつかんだ。

「こっからは作戦Cでいい!?」
「やむなしね……っ!!」

 スズネは空中で体をひねって、二回転、三回転。

「いっけぇ〜!!!」

 四回転目にシグをワゲハシへとぶん投げた。
 その力業に会場はどよめき、ワゲハシも二度目の驚きに目を丸くしていた。

「自分を犠牲にして、仲間を助けるのはよろしい! だが、ジグ殿では力不足ではないですかな!」
「それはどうかしら?」

 不敵ふてきに笑うシグに違和感を感じながらも三つの突風をワゲハシ自身の背へと向かわせ、またはばたく。

「スズネ殿でも逃れられない突風を前には何も出来はし……」
 
 計四つの突風を合わせて一気に場外へと吹き飛ばそうとするワゲハシにシグは近づくと。

『ウィメント』

 と唱え、突風を一気に弱めた。
 自分の魔法が打ち消されたのに気づいたワゲハシはクチバシをぽかんと開いていた。
 その隙にシグはワゲハシの杖を奪って、一つだけ残った突風に飛ばされる。
 すべてを消さなかったのは、突風を利用して投げられた勢いを殺すためであり、スズネに託すためであった。

「これで決着っ! 」

 ワゲハシの視界からシグがいなくなるとスズネが現れ、ワゲハシを突き飛ばした。
 シグを投げた時にスズネの突風に飛ばされる軌道もずれた。
 そのおかげで籠の側面でシグを追うように移動していたのだ。
 飛んできたにも等しいスズネであったこともあり、ワゲハシは場外へと飛ばされたのであった。
 鉤爪で踏ん張っていたワゲハシを突き飛ばしたおかげでスズネは場外へ出ることはなかった。

「勝負、つきましたっ!! ワゲハシ選手が場外に出たことにより失格っ! よって! スズネ選手、シグ選手の何でも屋チームの勝利ですっ!!」

 コケコッコーの声が響き、観客の鳴き声と歓声がつられて響き渡る。
 シグは風魔法を使ってなんとか着地し、スズネは肉体強化のおかげで華麗かれいに着地する。

「どもども〜! オカマ、その杖どうするの? 貰っちゃう?」
「ちゃんと返すわよ」

 スズネが面白おもしろおかしく言っていると、籠の外に突き飛ばされた杖の持ち主が飛んできた。

「いやはや、見事な作戦であった。まさか、吾輩わがはいの魔法が打ち消されようとは驚いたわい」
って悪かったわね」
「なんの。其方たちならば、返してくれると信じておった」

 スズネは少し他所を向いて、口笛を吹いていた。
 魔法使いにとって、杖は命の次に大事なもの。
 スズネにはわからずとも、シグにとっては当たり前のことである。
 むしろ、返さなくてはこちらの立場が悪くなるのは明白でもあった。

「ロフク様のご意向にどうか答えてくだされ」
「任せてくださいっ!」

 スズネに頷いてから、「それでは」とワゲハシはゆっくり飛び立っていった。
 スズネとシグも迎えの鳥人族に連れられ、退場する。
 その後、ラーカス連合の試合を観戦した。
 作戦会議も早めの就寝もとどこおりなく済まされた。

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