「鳥籠神鳥祭の四日目! 本日は準決勝を執り行いますっ! 本日は一試合だけをし、その勝者がチュウヒ様と決勝戦にて勝負します! 観客はもちろん超満員! ただ、ラースカ連合が出る試合ということもあり、鳥籠の周囲はラースカ連合によって近づけないようにされています」
籠の周りには黒い羽を持つ鳥人族十三人が四方八方に飛んでいる。
ラースカ連合が試合をする時には必ず、こういった状況になっていた。
ルールに明記されていない事であり、族長からも注意されないので周りの鳥人族も不満はあれど距離を取るようにしている。
関わると良からぬ事をされるという噂もあり、尚のことである。
「え〜、ここまでの試合でも鳥籠神鳥祭の進行を妨げてはおらず、ルール違反でない為、試合を開始いたします。司会は私! ニワノ・コケコッコーが行いますっ! 本日はこの一試合のみ! 準決勝!! 選手の入場ですっ!!」
司会の声で向き合うように選手達が現れた。
片方には五人の黒い翼を持つ鳥人族。
もう片方には二人の鳥人族とその足を二人が掴んでいる。
「右翼〜!! ラースカ連合!!」
先に入場した黒い鳥人族たち。
籠の縁にまばらに降り立ったが、一人は他の四人よりも高いところに止まっている。
歓声は周りを取り巻く十三人の同胞達が鳴き声を響かせていた。
「右翼〜!! 他国の何でも屋!! スズネ選手! シグ選手!」
二人も鳥籠の底に降り立った。
歓声は上がったが、今までと違い状況となった。
スズネは歓声に応えることなく、トンファーを構えた。
シグも杖を構え、すぐさま臨戦態勢である。
「おーっと、他国の何でも屋も今までとは違い、すぐに臨戦態勢をとっていますっ!」
その対応に少しの間、観客達が静まりかけたが、次の瞬間には一気に大きく歓声が上がる。
「良いぞぉー!! やってやれ〜!!」
「こんな気味の悪い奴らに負けんじゃねぇぞぉ!!」
「懲らしめてやってぇ〜!!」
「こんな奴らとチュウヒ様が決勝戦なんて納得しねぇからな〜!!」
「お〜っと! 何ということでしょうかっ! 今まで他国の何でも屋に観客一団となって歓声があがっております!」
歓声は昨日のワゲハシとの準々決勝に勝利した時のように大きく響き渡っていた。
観客のボルテージは今までにない盛り上がりを見せている。
ラースカ連合のリーダーであろう鳥人族が大仰に黒い翼を羽ばたいてみせた。
「こうも嫌われるといっそ清々しいな。景気付けにお前らを叩きのめすとするか」
「やれるもんならやってみなさいよ!」
「嬢ちゃん、今までそんなもん持ってなかったよな? 俺たちのために温存してたのか?」
「アンタ達みたいなのを懲らしめるにはちょうど良いだけ! だから、特別だとか思わない方が良いよ!」
「そうかい……そんな金になりそうなもんを見せられちゃ〜、こっちも黙ってねぇが。今は試合に専念させてもらうぜ」
そう言い終わると、他四人の鳥人族が翼を大きく広げて鳴き声をあげる。
中には羽ばたかせる者もいた。
「スズネ、油断するんじゃないわよ」
「わかってるって」
「選手たちも準備万端のようです! この試合、どうなるのかっ! チュウヒ様との決勝戦はどっちが勝ち進むのか見ものです!! レディ〜!!」
『コケ! コッコ〜!!』
この試合までも司会を務めるニワノ・コケコッコーの喉は疲れを見せず、澱みない鳴き声が響いた。
「スズネ」
「先手必勝っ、でしょ?」
返事をしながらにスズネは肉体強化の補助魔法を施した。
一気に相手のリーダーと思われる鳥人族であるラースカへトンファーの一撃を振り下ろす。
「ま、試合の傾向からこうくるわな」
そして、予想していたラースカに避けられる。
だが、その避け方は自ら場外へ出るというものだった。
「え!?」
「ははっ! その驚きっぷり、後で酒の肴できそうだなっ!」
「おぉ〜っと! まさかの展開! ラースカ選手が自ら場外へ出ましたぁ〜!」
その様子に観客たちもどよめきが起こる。
どういうことだと驚きを隠せずにいた。
「驚くにはまだ早いだろーよ、おい! 次はお前だ、さっさと入場しろ!」
「へい、頭!」
ラースカの声掛けで籠の周りを飛んでいた連合の一人が籠の中へと入った。
「ちょっと! そんなのありなの!?」
「ルールに公表されてないことはやっても良いってことだろ? ダメなら、すぐに族長様から声が掛かるはずだ。だが、どうだ?」
視線は族長のロフクへと向けられるが、声を掛ける様子は伺えない。
後ろのサキとモトは顔を見合わせてからロフクを後ろから見るが、変化はなかった。
「ははっ! そういうことだ! 試合を続けようじゃねぇか、何でも屋さんよぉ〜!」
「やっぱり、こうなったわね。スズネ! 作戦通りよ!」
「納得いかないけど、やるしか、ないか!」
籠の中を飛び回る相手の攻撃を避けながらトンファーを腰元へ戻した。
スズネは身につけていた荷物ポーチから手袋を出し、手にはめた。
シグも杖をしまい、同様に手袋を手にはめ、ポーチから握り拳よりもすこし小さなきのみを取り出した。
「何をしようったって、お前らは俺たち連合の前では弱っちぃんだよ!」
「それはどうかしら?」
シグには五人のうち二人から攻撃されるが、難なく避ける。
「コイツ、魔術師にしてはよく避けるぞ?」
「どうせすぐにへばるだろ! 避けさせまくればいいんだ!」
絶え間なく、攻撃が続く中でシグは両手にきのみを持ち直した。
隙をついて、きのみを相手の羽毛に刷り込むように押し付けた。
「何しやがった?」
「お前の体にきのみの汁が付いてるだけみたいだぜ?」
「嫌がらせか? そんな事で攻撃の手は緩めねぇぞ!」
きのみを刷り込まれた一人が怒り、攻撃はまた速くなったがシグは避け続ける。
そんな中でももう一人にもきのみを刷り込んだ。
避けながらに口で左手の手袋を噛んで、手を引き抜いた後に杖を掴んだ。
「アイツ、やる気だぞ」
「呪文を唱えさせる隙を与えるな!」
相手のそのやり取りにシグは鼻で笑いながら、噛んでいた手袋を足場に落とした。
「この野郎!」
鉤爪で攻撃をしてきたが、シグは受け流すように左足を軸に回って避け。
「考えなしに攻撃にしても当たらないわよ」
『突風よ』
左手に込めた風魔法を相手の脇腹にぶつけた。
「くぅ! そんな攻撃でやられは……あれ?」
すると、体勢を崩した鳥人族は羽ばたいて立て直そうとしたが、風にあおられて場外へとフラフラと出ていく。
「この野郎、何しやがった!!」
次は嘴での攻撃を飛び避けて。
『突風よ』
通り過ぎた鳥人族の後ろから杖を思い切り振った。
鳥人族を追いかけるような強い風が吹き荒れた。
「そんなもんが追いつくわけ、どわぁあ!!」
突風は追いつき、相手ごと場外へと吹き出ていった。
それを見送ることなく、シグは落とした手袋を拾って、ズボンのポケットへ雑に入れた。
「さ、これで終わり? 試合はまだ終わってないわよ」
籠の周りを飛び回っているラースカを見据えて言ったシグ。
ラースカは戦いながらに自らの位置も把握している相手に驚きながらも苛立ちを募らせた。
「ちっ! なにやってるっ! アイツを倒して来い!」
籠の外から試合を見ていたラースカ連合の二人が入場した。
「さて、こっちは順調だけど……」
右手の手袋の内側で魔力を込めた髪の毛は相手にバレていないことに安堵しながら籠の上部へと視線を向ける。
「スズネも問題なさそうね」
視線の先でスズネが三人の鳥人族と戦っていた。
今まさにきのみを相手に刷り込むように当てていたのだった。
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