第三十三話 ちょっ! 待ってぇ〜!

 

「アタシ達も行くよ!」
「「はい!」」

 サキとモトは大鳥の姿に変身した。
 今回は手綱を持ち合わてないが、スズネは気にする事なくモトの背中へとしがみついた。

「振り落とされないようにしなさいよ。雨を降らせてるのも難だけど、すべるわよ」
「わかってる! それも踏まえて戦うつもりだから」
『では、行ってきます!』
「健闘を祈っておるぞ!」

 ロフクの言葉にサキとモトが頷くと、大きな翼を羽ばたかせてスズネと共に戦地へとおもむいていった。

「私は、雨をできる限り長引かせます! お二人はサラマンダーが襲ってきた時はお願いします!」
「ほほ、いつもの口調で構わんよ」
「ここまでの魔術を操る者から敬われるのは吾輩たちの性に合わぬ」
「……そう。なら、いつも通りにさせてもらうわね。二人とも私を守ってちょうだい!」

 シグの言葉でロフクは翼を大きく広げ、ワゲハシは杖を高らかにかかげた。
 雨粒をもてあそぶような風が吹き始めた。
 鳥人族やスズネたちの手の及ばないサラマンダーが爪を突き立て襲ってくる。
 だが、それが届く事は叶わない。
 風が行く手をはばみ、刃のような風が問答無用にサラマンダーを切り刻むからだ。
 ロフクもワゲハシも容赦ようしゃのいらない敵には無慈悲むじひに死へと追いやる魔術を使う。
 その気になれば、敵を殺す事など造作ぞうさでもないのだ。

(試合が殺し合いじゃなくてよかったわね……)

 シグは二人に恐怖しながらも心強いと胸を張った。
 髪の毛が尽きるまで雨を降らし続けていく。

 ・――・――・

「まずはっ! 一体目ぇ〜!」

 スズネはと言うと、早速一体目のサラマンダーの首を切り落としていた。
 両手にトンファー。
 トンファーの棒状の部位を魔力で外側に片刃のように鋭くしている。
 超接近戦で敵と味方を間違えないようにするためでもある。

『スズネさん!』
「ありがと、次行くよ!」

 当然、スズネは空が飛べない。
 だからと言って、サキやモトの背に乗ってのサラマンダー討伐は骨が折れる。
 サラマンダーも馬鹿ではない。
 近寄って、すんなりと殺される訳がない。
 もちろん、攻撃も避ければ、反撃もしてくるだろう。
 それをされない為に変身した二人の大きな身体を足場にスズネは空中を駆けるようにサラマンダーの首を切り落としていく。
 上下左右、縦横無尽じゅうおうむじん出鱈目でたらめでありながらも的確に首を落としていく。
 サキとモトも交互にスズネの足場として、スズネの速さについていく。

「なんて戦い方してんだ、あれ……」
「俺ら、邪魔になるんじゃあ〜?」
「何言ってんだ! スズネじょうに獲物取られて恥ずかしくねぇのか!?」
「そうですよ、今こそ鳥人族の意地を見せる時でしょう」
「それもそうだな!」
「俺らは俺らなりに訓練を生かす時だぞ!」
「やったるぞ〜!!」
「「おーー!!!!」」

 サブハヤとハブサヤの声掛けで鳥人族達は鼓舞された。
 スズネ達を追うサラマンダー達の不意をつき、倒していく。
 反撃されようとも三、四人が組んでいる事で連携してサラマンダーを倒していく。
 組んでいる鳥人族の中に一人だけ翼の先だけを人の手に変化させて、剣や槍などで倒していった。
 サブハヤとハブサヤも協力して、一匹ずつ確実に仕留めている。
 時折、手こずっている仲間の助けもしているようだ。
 それでも、負傷者無しとは言えず、何人かの鳥人族はサラマンダーから攻撃を受けて、前線から離れていく者もいた。

「おい! 大丈夫か!?」
「なんとかな」
「お前は下がってろ! あとはみんなで片付ける!」
「俺だけ下がる訳には」
「馬鹿野郎! そのための訓練をしてきただろ!」
「組み直しを頼む! 攻撃役がやられた!」
「わかった! 入れそうな組に入ってくれ!」
「悪いな」
「やられたら、お互い様だ。一緒に里に戻るぞ」
 
 誰かが傷付けば、声掛けをする。
 状況に応じて組み分けをし直すか、他の組へと入っていく。

「頼んだぜ!」
「あぁ! 遅れはとらねぇ!」
「組が減った! 敵の奇襲にも気をつけろよ!」
「「「おーー!!!」」」

 戦える人数が減れば、視野を広げて応戦する。
 声掛けによって、協力し合い、サラマンダーと渡り合っていく。
 そうやって戦い続けていく中で。

「これで三十体目! たぶん!!」

 スズネ達も一騎当千とも言えるほどに奮闘していた。
 スズネが適当に数えていたこともあり、正確な数字ではないが、三十体以上の敵を倒していた。
 流石に疲労が現れてきたようで、モトの背中に着地すると肩を揺らして息をしている。

『大丈夫ですか?』
「なんとかね、ちょっと張り切りすぎたかも」
『スズネさん! モト! 後ろ!』
「へ? わっ、ちょい!」

 息を整えているスズネを狙って、一匹のサラマンダーが不意をついてきていた。
 サキは離れた場所を飛んでいて、間に合わずに声を掛けるしかなかったようだ。
 スズネはトンファーで攻撃を防ごうとしたが、敵からの攻撃を防げなかった。

「あ、あれ?」

 その代わりに敵は空中でけ、全身も刻まれて地へと落ちていった。
 残ったのは敵をほおむったであろう風の名残だけである。

「あ、危なかった〜」
『モトも油断してました』
『お父様たちに助けられましたね』

 まだ青い光を放っている族長の家へモトとサキが向き直った。
 スズネもトンファーの持ち手を仕舞って、両腕を振って見せた。
 さっき助けてくれたのは、ロフクかワゲハシの風魔法だろうと思ったからだ。

「スズネ〜! 里の事は大体片付いたみたいだから! チュウヒの援護に向かってちょ〜だ〜い!」

 その声を聞いて、スズネの動きが止まった。

「こっちはもう私たちでなんとかできるくらいにサラマンダーは減ったから任せてちょ〜だい!」

 確かにシグの大声が聞こえてくるくらいには戦いの騒音は小さくなっている。
 あとは残党を倒すくらいなものだろう。

「わかったけどっ! アイツはどこにいるの〜?」

 スズネも大声で返事した直後、大森林の中から炎を巻き込んだ竜巻が見えた。
 きっとそこにいるのだろうが、こちらとは違い規模が大き過ぎるように思えたスズネはあんぐりとなった。

「あっちの方にいるみたいよ!」
「いやいや! アタシたちだけじゃ、厳しそうじゃない!?」
「こっちはもう手を割けないわよ! サキさんとモトさんもお兄さんを見返させるなら今がチャンスだと思わない!?」

 そんなシグの言葉にサキとモトは顔を見やって頷いた。
 スズネにとっては、嫌な予感は予感ですらないようで。
 
「あの〜、二人とも?」 
『行きましょう、スズネさん』
『スズネさんの力がモトたちには必要です!』
「ちょっと待って! 心の準備を、それに少し荷が重いというか」
『スズネさんなら、大丈夫です!』
『モトたちも必死にサポートしますから!』
「ちょっ! 待ってぇ〜!」

 二対一の多数決により問答無用の魔族との戦闘へと巻き込まれるスズネ。
 チュウヒの所へと最速で向かわんとするモトの背にしがみついて、心の準備と息を整えるしかなかった。

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