mashiromiya8271@gmail.com

黒狼記

第十六話 試練の再開

  『ん〜? 朝か』  朝日の木漏こもれ日びが蒼あおの顔を照らして、眩まぶしさのあまり目を覚ました。 寝ぼけ眼であくびをして、頭を上げて少し辺りを見回した。 ここまでぐっすりと寝ていた事もあって、寝込みを襲われなかった。 何か...
黒狼記

第十五話 休息 と 厄介事

  「じゃ、じゃあ、失礼します」『? ああ』  どこかぎこちない椿つばきを見て、蒼あおは少し疑問に思っていた。 何か緊張するような事でもしているように思えたからだ。 今もこっちに来るのか来ないのか、足踏みを繰り返すだけの椿に困...
黒狼記

第十四話 夕食 と 狼

   ちりーん、しゃりーん。 と試練が始まり、また同じ音で試練が終わる。  椿つばきを抱えずに戦えるようになった蒼は、十影とかげと九否くいなの試練よりも危なげなく、次から次へと組み手を仕掛けてくる忍を捌さばききり、無傷で潜り抜...
黒狼記

第十三話 ちょっとした一悶着

  「っ……思ってたより痛いな」  錦にしき達が去った後に階段に腰掛けた。 試練の中、ずっと刺さりっぱなしだった手裏剣を抜いた。 刺し傷から血が滲にじみ出てきている。 「私からしたらすごく痛そうなんですけど。今すぐ治しますね」...
黒狼記

第十二話 第三の試練

  「あんなの無理です! 気絶するなって言うのがもう無理!」「だから、悪かったって。あーでもしないと、当たっちゃうからさ」  目が覚めた椿つばきに小言こごとを言われながら進む。 気絶していた椿をおぶって、一人で二つ目の社やしろ...
黒狼記

第十一話 第二の試練

   一つ目の社やしろを後にして、緩ゆるやかな下り坂を歩いていた。 「御供おそなえは毎回あんな感じなんですかね?」「かもしれないな。あの狐、稲荷寿司いなりずしを食べてたな」「ですね」「弓月は魂たましいだけの時は食べれなさそうだし、ど...
黒狼記

第十話 第一の試練

   蒼あおを先頭に二人は試練の待つ道を歩いていく。 だが、地図を持って先頭を歩く蒼は道をすぐに間違えた方へと歩き……数十分もの間、まだ麓ふともの大社近くを歩き彷徨っていた。 「やっぱり、私が前の方がいいんじゃ……」「いや、こ...
黒狼記

第九話 九尾の試練

  「私わたくしは一尾いちびと申します。季喬様ききょうさまの遣つかいにございます」  ゆっくりとお辞儀をした。 椿つばきもつられるようにお辞儀をするが、弓月ゆみづきは頭を下げずに一尾をじっと見ていた。 左肩には青い人魂も姿を現...
黒狼記

第八話 伏見九ノ峰大社

「本当に変わった人でしたね」「あれはただの変わり者ではない。人間にしては察しが良すぎる。それに我の事を知っておった。話には出さなかったが、椿つばきの事も……蒼あおの事さえも知っておるような気さえした。我らの旅の目的も十中八九じゅっ...
黒狼記

第七話 お礼のような頼み事

  「遠巻きにこちらを見ていた割には随分とでしゃばるんじゃな」  引き留めていた声に対して、弓月ゆみづきは振り返らずに言う。 椿つばきは振り返って、その声の主を見た。 白い狩衣かりぎぬと黒い袴はかまを着こなし、白い烏帽子えぼし...
タイトルとURLをコピーしました