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黒狼記

第二十七話 煮湯の夜

三日月が薄く照らす晩の事でございます。 とある平穏貴族へいおんきぞくの屋敷で庭師にわしが夜遅くまで、庭の手入れをしておりました。 いつもならば、手元が暗くなる時間には仕事を切り上げているのですが、この日は雇った貴族が隅々まで綺麗に整えろと宣...
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第二十六話 天明の屋敷

「……屋敷など見えんが?」「いやいや、ちゃんとありますとも。今日は一段と生えてしまったな〜。虚無僧きょむそう殿が来てから毎日楽しそうで何よりなんですが、ちゃんと抑えるように言っておかないと。ささ、入ってください」 天明てんめいは草を腕で退ど...
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第二十五話 羅京門を越えて

「全く、相変わらず掴みどころのない方じゃ」 そう文句を言う弓月ゆみづきの顔は、綻ほころんでいた。 三百年程前に仕つかえていた相手である季喬ききょうが姿は少し変わろうとも、性格や言動に変わりはなく生きていた事。 それが嬉しかったのだろう。 椿...
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第二十四話 企み と 企て

「さ、そろそろ、ここに来た理由を聞くとするかの」 季喬ききょうは扇子せんすを広げて、口元を隠した。 世間話はこれくらいにしてと含みのある言葉に弓月ゆみづきも耳をピクリと跳ねさせた。「では、御言葉に甘えさせて頂きます。私の一族、主に私の島流し...
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第二十三話 九尾 季喬

「おー! これは凄い! 椿も見てみろ」「……わぁー、凄いですね。辺り一面、黄金色こがねいろ!」  モヤを抜けた先には見渡す限り芒すすきが野原のはらを覆おおい尽つくしていた。 夕日に照らされた芒が黄金色に光り、風に揺れている。 芒野原の中にポ...
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第二十二話 試練の終わり

「蒼殿あおどの、社やしろへ献けんずる事を許ゆるそう」 忍たちの総元締めである伊竹いたけは、何事もなかったかのようにそう言った。 その伊竹の後ろでは。「よくそんな物言いができるよな〜。惨敗ざんぱいして、怪我も治してもらっておいてよ?」「然しか...
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第二十一話 試練の行方

「蒼あおさん!」「っ!」 椿つばきのおかげで強張こわばった身体が動いた。 身体を捻ひねり、そのついでに刀へと形を変えた形無かたなしを切上げたが、空くうを斬った。 蒼の背中を捉とらえかけたクナイを攻撃によって寸での所で防いだ。 攻撃してきた伊...
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第二十話 最後の試練

「緋代ひしろ!」 錦にしきは木から椿つばきを下ろして、一目散に緋代へと駆け寄った。 まだ地面の上で跳ねているが、まな板の上の鯉こい。 何もすることができないでいた。「すぐに帰してあげるからね。来てくれてありがとう」 巻物を広げ、再び手を突い...
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第十九話 風 と 水

押し付けた手の巻物から水が溢あふれ出した。 だが、その水は地面を這う事なく、空へと上がっていく。 空高くとまではいかないまでも頭上。 社やしろの敷地内の上空に見えない水槽すいそうがあるが如ごとく、水が溜まっていく。 そして、水が出てこなくな...
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第十八話 第八の試練 

「さっきの試練はそういうものだったんですか」「あぁ、まんまと忍術にかかった。でも、連中のやり方が甘かったからやり返しせたんだが、やり過ぎたな」「幻術を扱うのも苦手だったり?」「まぁ、苦手だな。相手を騙だますのはちょっとな。でも、使う時は残忍...