黒狼記

第四話 宿屋からのお礼

 朝日で辺りが明るくなる頃。 なんの変わり映えしない朝の訪れを椿つばきは寝起きのぼんやりとした頭で感じ取っていた。 「なんだろ、このふさふさともふもふしたのは……気持ちいい」  寝ぼけて顔の横にある触り心地の良いものを...
黒狼記

第三話 新月の夜に

   月の光はなく、暗闇くらやみが包み込んでいた。 今宵こよいは新月しんげつ。 外はもちろん大部屋の中も暗闇に包まれている。 二つの寝息寝息が規則正しく静かに聞こえてきていた。 だが、その二つだけである。 大部屋にいた他の客たちは息...
黒狼記

第二話 一時の休息

   蒼あおの方向音痴さを披露はろうした後も二人は街道を歩いていく。 お昼時には、街道を少し離れて荷物を解いた。 持たされていた簡素かんそな昼食を食べた。 中身は海苔のりの巻かれたおにぎりである。 「美味いな」「ですね。……あ...
黒狼記

黒狼記 弐 九尾に良いように化かされるようです

第一話 昔話 と 旅路    九つの峰みねがある山。 伏見ふしみと呼ばれるその土地には穢けがれ知らずの本殿ほんでん。 九つの峰には、九つの社があると言われている。 この大社には九つの尾を持つ神が住まうとされ、気に入られれば願い...
短編小説

心の中の小人さん

 あなたの見慣れた部屋。 けれど、その部屋の中が泥棒どろぼうに荒あらされたかのように散らかっています。 ものは例えで、実際に泥棒が入ったわけでも何かを盗られたわけでもないから安心して。 ここはあなたの心の中。 散らかっているものは...
短編小説

川 と 風

  「承うけたまわりました。その件は私の方で進めておきます」  上司から仕事を振られるのは当たり前で。 「この案件はお前に頼もうと思うんだ。なに、お前ならやれるさ」  その仕事を頑張り盛りの部下へと振る。 「...
短編小説

短編小説

見えない繋がりの中で 川 と 風 心の中の小人さん  黒狼記蓮木ましろの書庫名もなき世界の何でも屋   蓮木ましろのオススメ本 改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学 価格:1,650円...
短編小説

見えない繋がりの中で

   あなたに「おはよう」と言える幸せをいつも感じてる。  あなたはいつも起きるのが遅くて、いつも私が起こさなきゃ起きもしない。 アラームも4回鳴っても起きやしない。 こんな日常を愛いとおしく思えるのは忘れかけてる『過去』があ...
名もなき世界の何でも屋

第二十八話 夜更かし、しよっか!!

「どうなるかと思ったけど、なんとかなってよかった」「そうね。サキさんの機転が良かったからよ」「いえいえ。元はと言えば、私のせいなので」  裏路地からの帰り道、スズネはサキさんを負ぶったまま帰っている。 「族長の娘って、...
名もなき世界の何でも屋

第二十七話 空の旅をして帰ってきたわ

  「いらっしゃいませ……って、なにかあったの?」「ちょっと空の旅をして帰ってきたわ」  私が詩人じみた事を言うとハイネさんは眉間に皺しわを寄せた。 乱れた髪を整え、服も軽く払った。 「そんな事よりモトさんを少し預かって...
タイトルとURLをコピーしました