黒狼記

第十九話 風 と 水

   押し付けた手の巻物から水が溢あふれ出した。 だが、その水は地面を這う事なく、空へと上がっていく。 空高くとまではいかないまでも頭上。 社やしろの敷地内の上空に見えない水槽すいそうがあるが如ごとく、水が溜まっていく。 そして、水...
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第十八話 第八の試練 

  「さっきの試練はそういうものだったんですか」「あぁ、まんまと忍術にかかった。でも、連中のやり方が甘かったからやり返しせたんだが、やり過ぎたな」「幻術を扱うのも苦手だったり?」「まぁ、苦手だな。相手を騙だますのはちょっとな。でも、...
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第十七話 第六の試練

   最奥の社を後にした二人は、残り三つの社へと足を進めた。 滝が近くにあるのか、より霧が濃くなってきている。 石畳の階段も山の凹凸おうとつに沿って組まれているせいで登りや下りが激しくなっている。 「少ししんどいですね」 ...
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第十六話 試練の再開

  『ん〜? 朝か』  朝日の木漏こもれ日びが蒼あおの顔を照らして、眩まぶしさのあまり目を覚ました。 寝ぼけ眼であくびをして、頭を上げて少し辺りを見回した。 ここまでぐっすりと寝ていた事もあって、寝込みを襲われなかった。 何か...
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第十五話 休息 と 厄介事

  「じゃ、じゃあ、失礼します」『? ああ』  どこかぎこちない椿つばきを見て、蒼あおは少し疑問に思っていた。 何か緊張するような事でもしているように思えたからだ。 今もこっちに来るのか来ないのか、足踏みを繰り返すだけの椿に困...
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第十四話 夕食 と 狼

   ちりーん、しゃりーん。 と試練が始まり、また同じ音で試練が終わる。  椿つばきを抱えずに戦えるようになった蒼は、十影とかげと九否くいなの試練よりも危なげなく、次から次へと組み手を仕掛けてくる忍を捌さばききり、無傷で潜り抜...
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第十三話 ちょっとした一悶着

  「っ……思ってたより痛いな」  錦にしき達が去った後に階段に腰掛けた。 試練の中、ずっと刺さりっぱなしだった手裏剣を抜いた。 刺し傷から血が滲にじみ出てきている。 「私からしたらすごく痛そうなんですけど。今すぐ治しますね」...
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第十二話 第三の試練

  「あんなの無理です! 気絶するなって言うのがもう無理!」「だから、悪かったって。あーでもしないと、当たっちゃうからさ」  目が覚めた椿つばきに小言こごとを言われながら進む。 気絶していた椿をおぶって、一人で二つ目の社やしろ...
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第十一話 第二の試練

   一つ目の社やしろを後にして、緩ゆるやかな下り坂を歩いていた。 「御供おそなえは毎回あんな感じなんですかね?」「かもしれないな。あの狐、稲荷寿司いなりずしを食べてたな」「ですね」「弓月は魂たましいだけの時は食べれなさそうだし、ど...
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第十話 第一の試練

   蒼あおを先頭に二人は試練の待つ道を歩いていく。 だが、地図を持って先頭を歩く蒼は道をすぐに間違えた方へと歩き……数十分もの間、まだ麓ふともの大社近くを歩き彷徨っていた。 「やっぱり、私が前の方がいいんじゃ……」「いや、こ...
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