黒狼記

第三話 新月の夜に

月の光はなく、暗闇くらやみが包み込んでいた。 今宵こよいは新月しんげつ。 外はもちろん大部屋の中も暗闇に包まれている。 二つの寝息寝息が規則正しく静かに聞こえてきていた。 だが、その二つだけである。 大部屋にいた他の客たちは息を殺して、暗闇...
黒狼記

第二話 一時の休息

蒼あおの方向音痴さを披露はろうした後も二人は街道を歩いていく。 お昼時には、街道を少し離れて荷物を解いた。 持たされていた簡素かんそな昼食を食べた。 中身は海苔のりの巻かれたおにぎりである。「美味いな」「ですね。……あ、梅干しが入ってました...
黒狼記

黒狼記 弐 九尾に化かされるようです

第一話 昔話 と 旅路  九つの峰みねがある山。 伏見ふしみと呼ばれるその土地には穢けがれ知らずの本殿ほんでん。 九つの峰には、九つの社があると言われている。 この大社には九つの尾を持つ神が住まうとされ、気に入られれば願いを叶えてくれると立...
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心の中の小人さん

あなたの見慣れた部屋。 けれど、その部屋の中が泥棒どろぼうに荒あらされたかのように散らかっています。 ものは例えで、実際に泥棒が入ったわけでも何かを盗られたわけでもないから安心して。 ここはあなたの心の中。 散らかっているものは、日々を忙し...
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川 と 風

「承うけたまわりました。その件は私の方で進めておきます」 上司から仕事を振られるのは当たり前で。「この案件はお前に頼もうと思うんだ。なに、お前ならやれるさ」 その仕事を頑張り盛りの部下へと振る。「心配する事はない。お前のやれるだけをやってみ...
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見えない繋がりの中で川 と 風心の中の小人さん 黒狼記蓮木ましろの書庫名もなき世界の何でも屋 蓮木ましろのオススメ本改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学 価格:1,650円(税込、送料無料) (2025/10/12時点) 楽天で購入 ...
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見えない繋がりの中で

あなたに「おはよう」と言える幸せをいつも感じてる。 あなたはいつも起きるのが遅くて、いつも私が起こさなきゃ起きもしない。 アラームも4回鳴っても起きやしない。 こんな日常を愛いとおしく思えるのは忘れかけてる『過去』があるから。・――・――・...
名もなき世界の何でも屋

第二十八話 夜更かし、しよっか!!

「どうなるかと思ったけど、なんとかなってよかった」「そうね。サキさんの機転が良かったからよ」「いえいえ。元はと言えば、私のせいなので」 裏路地からの帰り道、スズネはサキさんを負ぶったまま帰っている。「族長の娘って、ほんとなの?」「はい。あま...
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第二十七話 空の旅をして帰ってきたわ

「いらっしゃいませ……って、なにかあったの?」「ちょっと空の旅をして帰ってきたわ」 私が詩人じみた事を言うとハイネさんは眉間に皺しわを寄せた。 乱れた髪を整え、服も軽く払った。「そんな事よりモトさんを少し預かってもらっていいかしら」「それは...
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第二十六話 ここにいてちょうだい

「おじさん、ありがと。登らせてくれて」「いつも美味い酒を飲ませてもらってるからな。これくらいお安い御用だ」 城門に着いた三人は、「インフォマツィーネ」の常連である門兵おじさんを見つけ、なんとか城門の見張り塔へ登れるように話をつけた。「登らせ...