黒狼記

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第二十話 岩と風の戦い

「ぬかせ」 蒼あおの言葉を鼻で笑ってから、力地りきじはしゃがみ込んで地面に拳を突き立てた。 すると、地面が揺れ、蒼の足元に大きく尖とがった岩が突き出てきた。 蒼は紙一重で避けると、三回の後方転回。 所謂いわゆる、バク転を三回して、人の大きさ...
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第十九話 賊の鬼と黒狼

逃げ延のびた賊ぞくは、息を荒あらげながら燃える茶屋の裏手うらてにある竹林たけばやしへと駆け入った。 茶屋の裏手の竹林は竹がまばらに生えているからなのか。 中へ入ると外見よりも広く感じられる。 生い茂しげる竹林の中にある明かりへと進む。 する...
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第十八話 まさかの再会

茶屋の山へ近づくにつれて、煙と匂いが濃くなってきた。 灰色の煙の中にあの混ざり合った匂いはするものの、不快な匂いはない。「焼け死にしてはないようだ……だが」 近づくにつれて、血の匂いが強くなってきている。 命に別状がなくとも、流血沙汰りゅう...
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第十七話 変わらぬ決意

それからの弓月ゆみづきと斑鳩いかるがの関係は変わりはなく、日々を過ごしていった。 ただ、お互いを心から信じ合える事が確かになった事でより親密になったと言えた。 そんな二人に里での諍いさかいが増え始めた。 少しずつではあったが、里が大きくなる...
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第十六話 そうは問屋が卸さない

「これから色々大変そう……義弟おとうと、頑張れ」 白理びょくりは蒼あおの背中を叩いた。 そのあと、叩いた場所を優しく撫でた。「ありがとう」 その優しい応援に微笑ほほえみかけた。「蒼くんの意志は十分わかりました。出来ることなら私としても旅の手...
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第八話 村へ案内

「そんな大声で叫ぶでないわ、たわけ!」「ご、ごめんなさい。あまりにも驚いてしまって……」 弓月ゆみづきは狼耳おおかみみみを手で押さえて、椿つばきに吠ほえた。 怒られた椿は体を少し跳ねさせて、俯うつむいた。 それを見てため息つきながら、狼耳か...
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第十五話 結晶の理由

「さて、蒼あおくんに結晶の中をお見せしたので、しっかりと封印を施ほどこすとしましょう」 皓月こうげつは目まで隠していた鉢巻を外した。 その鉢巻はちこきを袖口そでぐちに仕舞しまう。 皓月の隠れていた目は真っ白だ。 しっかり見ると、瞳孔どうこう...
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第十四話 離れ堂へ

廊下ろうかを道なりに進んでいくと、外に面した廊下へと出た。 夕日の橙色だいだいいろに照らされた廊下の先には、本堂ほんどうから離れた堂どうへと続いている。 左側を見ると屋根が五つ連なっている塔があり、右側には小さな堂がある。 ただ、どちらにも...
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第十三話 これでも姉妹ですから

「白狼妖怪はくろうようかい……」 蒼あおはその言葉を咀嚼そしゃくするように呟つぶやいた。 その目もどこか遠くを見つめている。「聞いた事がない……という反応ですね。無理もありません、私たちは」「いや、知らないわけじゃないんだ。俺の姉ちゃんがア...
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第十二話 腹が減ってはなんとやら

目覚める時のような微睡まどろみを感じながら薄く目を開けた。 視界がぼやけて、身体から少し怠だるさも感じる。 そのおかげで自然と瞼まぶたが降りてきた。「……そうか、身体に戻ったのか。にしても……」 なんだか心地が良い。 まるで干したての布団の...