黒狼記

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第七話 お礼のような頼み事

「遠巻きにこちらを見ていた割には随分とでしゃばるんじゃな」 引き留めていた声に対して、弓月ゆみづきは振り返らずに言う。 椿つばきは振り返って、その声の主を見た。 白い狩衣かりぎぬと黒い袴はかまを着こなし、白い烏帽子えぼしを被っている。 平穏...
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第六話 治癒 と お礼

「なんてこった、本当に治っとる……」 虚無僧きょむそうは首を触さわりながら呟つぶやいた。 椿つばきが治癒の妖術を施ほどこしてから半刻程で治した。「治ってよかったです。ちょっと疲れちゃいました」「ようやってくれたの。して、虚無僧よ」 椿に労ね...
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第五話 平穏京の羅京門

宿屋での野盗退治から三日目の昼が過ぎた頃、京へと辿り着いていた。 「やっと着いたな」「ここが京……なんですね」 二人して、三度笠さんどがさをくいっと上げ、大きな門を眺める。 平穏京へいおんきょう。 そう名付けられている京の都。 三百年程前に...
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第四話 宿屋からのお礼

朝日で辺りが明るくなる頃。 なんの変わり映えしない朝の訪れを椿つばきは寝起きのぼんやりとした頭で感じ取っていた。「なんだろ、このふさふさともふもふしたのは……気持ちいい」 寝ぼけて顔の横にある触り心地の良いものを触る。 抱きしめながら、優し...
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第三話 新月の夜に

月の光はなく、暗闇くらやみが包み込んでいた。 今宵こよいは新月しんげつ。 外はもちろん大部屋の中も暗闇に包まれている。 二つの寝息寝息が規則正しく静かに聞こえてきていた。 だが、その二つだけである。 大部屋にいた他の客たちは息を殺して、暗闇...
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第二話 一時の休息

蒼あおの方向音痴さを披露はろうした後も二人は街道を歩いていく。 お昼時には、街道を少し離れて荷物を解いた。 持たされていた簡素かんそな昼食を食べた。 中身は海苔のりの巻かれたおにぎりである。「美味いな」「ですね。……あ、梅干しが入ってました...
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黒狼記 弐 九尾に化かされるようです

第一話 昔話 と 旅路  九つの峰みねがある山。 伏見ふしみと呼ばれるその土地には穢けがれ知らずの本殿ほんでん。 九つの峰には、九つの社があると言われている。 この大社には九つの尾を持つ神が住まうとされ、気に入られれば願いを叶えてくれると立...
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第二十六話 旅支度と旅立ち

鉄慈てつじから椿つばきを旅に連れていく許ゆるしをもらった次の日、蒼あおは春芽はるめと夏葉なつはに連れられ、村の市場で旅に必要なものを買いに出ていた。「あおさん、これなんてどうでしょう?」「あお! これなんてどう!?」「えっと、とりあえず、二...
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第二十五話 家族、水入る?

獄舎ごくしゃから政元まさもとの家へ帰ってきた弓月ゆみづきは踏石ふみいしの上を見た。 そこには出て行く前にはなかった一組の草履ぞうりが増えていた。「む、この草履は……」 弓月も草履を脱ぐとそのまま、鉄戒てっかいと椿つばきの部屋へと足を伸ばした...
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第二十四話 けじめ

弓月ゆみづきは「悪い奴が捕まっとる場所」である獄舎ごくしゃーー現代で言うところの刑務所ーーへと向かう。 門を出て右へ。 しばらく歩いて、突き当たりを左へと曲がった。 すると、家々が立ち並ぶその奥に木で作られた塀へいが見える。 その塀の中では...