黒狼記

黒狼記

第二十四話 企み と 企て

「さ、そろそろ、ここに来た理由を聞くとするかの」 季喬ききょうは扇子せんすを広げて、口元を隠した。 世間話はこれくらいにしてと含みのある言葉に弓月ゆみづきも耳をピクリと跳ねさせた。「では、御言葉に甘えさせて頂きます。私の一族、主に私の島流し...
黒狼記

第二十三話 九尾 季喬

「おー! これは凄い! 椿も見てみろ」「……わぁー、凄いですね。辺り一面、黄金色こがねいろ!」  モヤを抜けた先には見渡す限り芒すすきが野原のはらを覆おおい尽つくしていた。 夕日に照らされた芒が黄金色に光り、風に揺れている。 芒野原の中にポ...
黒狼記

第二十二話 試練の終わり

「蒼殿あおどの、社やしろへ献けんずる事を許ゆるそう」 忍たちの総元締めである伊竹いたけは、何事もなかったかのようにそう言った。 その伊竹の後ろでは。「よくそんな物言いができるよな〜。惨敗ざんぱいして、怪我も治してもらっておいてよ?」「然しか...
黒狼記

第二十一話 試練の行方

「蒼あおさん!」「っ!」 椿つばきのおかげで強張こわばった身体が動いた。 身体を捻ひねり、そのついでに刀へと形を変えた形無かたなしを切上げたが、空くうを斬った。 蒼の背中を捉とらえかけたクナイを攻撃によって寸での所で防いだ。 攻撃してきた伊...
黒狼記

第二十話 最後の試練

「緋代ひしろ!」 錦にしきは木から椿つばきを下ろして、一目散に緋代へと駆け寄った。 まだ地面の上で跳ねているが、まな板の上の鯉こい。 何もすることができないでいた。「すぐに帰してあげるからね。来てくれてありがとう」 巻物を広げ、再び手を突い...
黒狼記

第十九話 風 と 水

押し付けた手の巻物から水が溢あふれ出した。 だが、その水は地面を這う事なく、空へと上がっていく。 空高くとまではいかないまでも頭上。 社やしろの敷地内の上空に見えない水槽すいそうがあるが如ごとく、水が溜まっていく。 そして、水が出てこなくな...
黒狼記

第十八話 第八の試練 

「さっきの試練はそういうものだったんですか」「あぁ、まんまと忍術にかかった。でも、連中のやり方が甘かったからやり返しせたんだが、やり過ぎたな」「幻術を扱うのも苦手だったり?」「まぁ、苦手だな。相手を騙だますのはちょっとな。でも、使う時は残忍...
黒狼記

第十七話 第六の試練

最奥の社を後にした二人は、残り三つの社へと足を進めた。 滝が近くにあるのか、より霧が濃くなってきている。 石畳の階段も山の凹凸おうとつに沿って組まれているせいで登りや下りが激しくなっている。「少ししんどいですね」 息が上がって辛そうにする椿...
黒狼記

第十六話 試練の再開

『ん〜? 朝か』 朝日の木漏こもれ日びが蒼あおの顔を照らして、眩まぶしさのあまり目を覚ました。 寝ぼけ眼であくびをして、頭を上げて少し辺りを見回した。 ここまでぐっすりと寝ていた事もあって、寝込みを襲われなかった。 何か怪しい物音があれば、...
黒狼記

第十五話 休息 と 厄介事

「じゃ、じゃあ、失礼します」『? ああ』 どこかぎこちない椿つばきを見て、蒼あおは少し疑問に思っていた。 何か緊張するような事でもしているように思えたからだ。 今もこっちに来るのか来ないのか、足踏みを繰り返すだけの椿に困惑していた。『なんか...