黒狼記

黒狼記

第三話 道すがら

誰にもすれ違う事なく、歩いてニ時間ほど経った頃。 日頃、辺りを見回すような事をしない弓月ゆみづきが辺りを気に掛け始めていた。「どうかしたのか?」「いや……うむ、どうも古い馴染なじみがここら一帯に結界けっかいを張っているようでな」 蒼あおが声...
黒狼記

第二話 ご用心

椿つばきの嫌な予感など知らずに、亭主ていしゅは話し始めた。「ここから東北東の飛駕山ひがやまで何者かに襲おそわれるという物騒ぶっそうな事が絶えません。そのせいで山道を使っていた人々は迂回うかいしており、近隣きんりんの宿屋の客が減っているのです...
黒狼記

黒狼記 参 山が荒れているそうです

第一話 つゆしらず 夜闇よやみが深まった山の中、鎧武者よろいむしゃは刀を帯刀しているにも関わらず「土つち」から逃げていた。 がしゃりがしゃりと鎧が鳴るのも構わずに、左手は腰に差した刀かたなに添そえたままにひた走る。「まさか、これ程とはっ!」...
黒狼記

第四十四話 次の旅へと

季喬ききょうの所から預けていた荷物を受け取り、帰ってくると天明てんめいが家でゆっくりとお茶を啜すすっていた。 「何はともあれ、無事に勾玉は清められ、藤祭ふじまつりは閉幕。いやはや、何より何より。弓月ゆみづき様方もお疲れ様でございました。姿も...
黒狼記

第四十三話 政の終わり

無事に藤祭ふじまつりを終え、一夜いちやを天明てんめいの家で過ごしていた。 もう見張みはり番ばんは要らないと思われたが、念の為にと蒼が家の外で一人見張りをしていた。「蒼あおさん、お疲れ様です」「椿つばき?」「なんだか眠れなくって」 家の外には...
黒狼記

第四十二話 八尺瓊勾玉の力

『妖力を……込める……怪我を治すようにっ!』  八尺瓊勾玉やさかにのまがたまに椿の妖力が込められた途端、眩まぶしいばかりの光が放たれた。 津流御祖神社つるみおやじんじゃで浄化した時よりも光は強く、一瞬にして辺りを真っ白に染め上げた。「くぉ〜...
黒狼記

第四十一話 上津流山の源流

「ったク、なんだってこんな事をオレガ……」 津流別雷神社つるわけいかづちじんじゃの境内けいだいへと流れる川の上流。 上津流山かみつるやまから流れる源流げんりゅうに黒い霧は漂ただよっていた。 その懐ふところには大壺おおつぼを抱え、赤茶色あかち...
黒狼記

第四十話 津流別雷神社

「あれから問題なく着きましたね」(橋があったのにも関わらず襲撃がなかった……となれば、ここで一気に襲ってくるかもしれませんね)  津流別雷神社つるわけいかづちじんじゃに着いた行列は歩を止めた。 ちりーん、しゃりーん。 天明てんめいが鈴を鳴ら...
黒狼記

第三十九話 津流御祖神社

行列が進み始めて坂に差し掛かったようで、少し御所車ごしょしゃも傾いた。 木々が生い茂り、木の葉の屋根を潜くぐっていく。 御所車が木漏こもれ日びを浴びながら進むこと、しばらくしてゆっくりと止まった。 ちりーん、しゃりーん。 と天明てんめいの言...
黒狼記

第三十八話 藤祭の道中

先の襲撃から何事もなく、歩を進める行列は津流御祖神社つるみおやじんじゃに向かい歩を進めていた。 襲撃があった事もあり、侍達は警戒を強めている。 貴族達も少し気を引き締めている者もいれば、オドオドと落ち着きのない者もいた。(ここまで動きはなし...